若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)

著者 :
  • 光文社 (2006年9月15日発売)
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感想 : 557

Thu, 21 Oct 2010

城繁幸氏のベストセラー本.

現代日本の病巣の中核をえぐった,一冊とでも言おうか.
本書は,現在の若者の負担の重さ,年功序列の構造的問題を赤裸々に指摘する.

現代日本の論点は 労使の格差でも,金持ちと貧乏の格差でもない.それは,年寄りと若者の格差だ.

こんなことを言うと,
「いやいや老人にも独居老人とか,いろいろあって大変じゃないか?
だいたい老人は弱者だ」
という反論をされる方もおられるだろうが,
マクロな構造の話である.
大体,世の中を二つの名詞の対立で議論すること自体,ラフな話なんだ.
その議論をする以上,要はマクロで構造の話なんだと諒解いただきたい.

往々にして問題は,固定観念にある.
メディアが移す,個別キーワードで僕らの発想はドライブされる事が多いが,

社会保障と言ったときにそのターゲットはどこに向かうか?
その多くは,年配層に向かう.
労働者保護と言ったときにそのターゲットはどこに向かうか?
すでに正規雇用を受けている人に向かう.
産業活性化,企業の景気対策と言ったときにそのターゲットはどこに向かうのか?
それは,すでに株式上場しているような既存勢力にむかう.

そこに隠れた構造は,何か?
既に発言力をもった,エスタブリッシュメントの保護であり,
年功序列的システムの保護である.

しかし,組織がピラミッド型であるという,前提と,
全員が出世する年功序列の仕組みは,絶対に両立しない.
これを成立させる要件は,指数関数的に組織が増大するというバブル的状態だけだ.
つまり,
年功序列制度は,安定的な制度ではない.
非常にバブリーな制度なのだ.
そのバブリーを支えた需要は,
戦後日本のたぐいまれなる戦後復興という大事業だ.

現在,そのフェーズから,安定な状態にフェーズシフトするなかで,
その折れ線部分の前後に位置する世代の考え方,常識,無理解のギャップが
生まれている.

それは,自然なことだ.

経済成長のフェーズがシフトすれば,組織の形態はそれにadoptするべきで,
それによって,時代を読める人間はなんとか先手を打ってかわすが,
それが出来ない人は辛酸をなめることになる.

現在,国民が納税したお金は,相当量,社会の革新のためではなく
現状の構造維持のために使われている気がする,

折れる幹の補強に未だ低木の若い芽が折られて用いられている気がする.
これから,この問題は,より激しく議論されていくだろう.

ちなみに「若者はなぜ3年でやめるのか?」ってタイトルはちょっと
ミスリードにおもえるなぁ.

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年1月5日
読了日 : 2010年10月21日
本棚登録日 : 2015年1月5日

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