肌 (百年文庫 60)

  • ポプラ社 (2015年1月2日発売)
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感想 : 9
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戦争が終わった頃の二編の話が、明治期ころの一遍をサンドイッチしている。男目線での情愛が絡んだ話。

丹羽文雄『交叉点』、男と女の成り行きは、平行に走っていた道が不意にクロスする交差点のようなもの、実際そんな感慨に浸ったこともある。ふとしたきっかけから女が男に、また、男が女にはまる場面がさらりと描かれている。
舟橋聖一『ツンバ売りのお鈴』、カンヅメした旅館の女中から身を落とした女と作家の話。女性がこれくらいしたたかで明るいと、気にかけても後味が悪くはない。
古山高麗雄『金色の鼻』、20年連れ添った夫婦が別れの届けを出すときに、男が同じ会社にいた支店長と事務員だった二人のなれそめから結婚生活を回想するような話。男と女の覚えていることは、全然別のことであるような気がする。男は幻想を見がちで、女はこれからのことが第一のよう。女は過去を振り返らない。
いまなら、テレビドラマで描かれそうな話。当時は小説がこんな心情を描いていたのだ。実際に体験したような気になる。若い読者がこれを読むのも社会勉強の一種に成りうるか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年1月24日
読了日 : 2013年1月24日
本棚登録日 : 2013年1月23日

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