幻想の平和 1940年から現在までのアメリカの大戦略

  • 五月書房 (2011年8月26日発売)
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 国際関係論の分野で「ネオ・クラシカル・リアリスト」という立場で精力的に発信されているクリストファー・レインさんによる、大戦略の理論書&提言書です。
 アメリカが、世界全体を支配しようとする「地域外覇権」を否定し、自国周辺の西半球だけを支配し、それ以外の重要な地域(欧州、中東、東アジア)はその地域の国々で安全保障の主体的な担い手になってもらい必要な(新たな覇権国が誕生しそうな)とき以外はアメリカの軍事的な関与を一切なくす「オフショア・バランシング」という戦略を提言しています。また、アメリカの代表的な価値観である、政治的な門戸開放(民主化)と経済的な門戸開放(自由でオープンな経済活動)を世界に広めようとするウィルソン主義を批判し、そのウィルソン主義がアメリカを地域外覇権国へ駆り立てたと厳しく断じています。
 あくまでもアメリカの大戦略についての提言書なのですが、結果的に『幻想の平和』の中で繁栄を享受してきた日本が「オフショア・バランシング」による米軍の全軍撤退によって、緊張が高まる東アジア周辺での安全保障の役割を担わ(責任転嫁)される将来を考慮しなければならないとも言えるわけで、国を預かる皆様にはその点を念頭に入れていただけたらと思います。
 訳者である奥山真司さんが翻訳された、ジョン・ミアシャイマー著『大国政治の悲劇ー米中は必ず衝突する』、スティーヴン・ウォルト著『米国世界戦略の核心ー世界は「アメリカン・パワー」を制御できるか?』にも、「オフショア・バランシング」について書かれてありますので、興味のある方は手に取られてみてください。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国際政治・戦略
感想投稿日 : 2011年12月11日
読了日 : 2011年12月10日
本棚登録日 : 2011年12月10日

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