色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋 (2015年12月10日発売)
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感想 : 99
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『風の歌を聴け』の次に読んだ村上春樹作品。
描写豊かな比喩表現が彼の作品の特色だということがよく分かった。

赤青黒白、灰色、緑色と名前に色彩を持つ人々と関わりながら、自分が何の色彩も特徴も個性も持っていないというコンプレックスに苦しむ主人公。
テーマは「人と人の関係性、調和の機微」だと思う。

『人の心と人の心は調和だけで結びついているのではない。それはむしろ、傷と傷によって深く結びついているのだ。痛みと痛みによって、脆さと脆さによって繋がっていくのだ。悲痛な叫びを含まない静けさはなく、血を地面に流さない赦しはなく、痛切な喪失を通り抜けない受容はない。それが真の調和の根底にあるものなのだ。』

今まで記憶から消し去ろうとしてきた自分の過去と真摯に向き合い、当時の真実を知ろうと「巡礼」をする多崎つくるの物語。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年10月26日
読了日 : 2024年1月14日
本棚登録日 : 2019年10月25日

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