わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)

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本棚登録 : 1167
レビュー : 147
制作 : Kazuo Ishiguro  入江 真佐子 
tatさん  未設定  読み終わった 

一貫して、主人公の語りで綴られるストーリー。

子供時代を過ごした上海の租界でのキラキラした思い出。
父と母の失踪。
大学卒業後の探偵としての成り上がりと、社交界での華麗な日々。
そして、上海に戻って、父と母の事件を調査する様子。
哀しい結末。

ストーリーの流れだけを見ると、冒険小説のようだけど、実は全く違っている。
予備知識なしで、ワクワクドキドキを期待し読んでいたので、少し戸惑った。

まず、主人公は、推理をしない。びっくり。
また、主人公は、人間誰しもがそうであるように、記憶を自分の都合のいいようにつくりかえているようで、ところどころ、後半はかなりの部分に違和感が出てくる。

幼少時代のオールドチップ論争からはじまり、クン警部の伝説化、自分が名探偵だというのも少し疑わしい気がする。
極め付けは、両親の誘拐から20年近くたっているにもかかわらず、まだ生きていて同じ場所に幽閉されていると信じきっているところ。
さらに、その事件の解決が世界を救うことになると、自分だけでなく全ての人が信じていることを信じているところ。
アキラとの再会。

これには、孤児という拠り所のない立場の主人公が、自分の内的な世界に居場所を求める悲しさがあった。さらに、フィリップおじさんとのラスト近くの会話で、世界が美しいものではなかった、と知るところは主人公に追い撃ちをかける。

主人公の世界が崩壊してしまうかと思ったけれど、母親や養子にとった家族の存在が、心をつなぎとめ、その時、孤児ではなくなったのだと感じた。

結論、なんだかよくわからないけれど、深い余韻が残る作品でした。

レビュー投稿日
2016年3月17日
読了日
2016年3月16日
本棚登録日
2016年3月14日
2
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