あいだのわたし (STAMP BOOKS)

  • 岩波書店 (2024年8月22日発売)
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現代版アンネの日記と言おうか。ドイツの避難民収容所で、認定を待つマディーナとその家族の話。架空の人物ということで、どの国の紛争から逃げてきたのか、彼女とその家族を縛る伝統や宗教がどの国のものなのか定かではないが、どの国にも当てはまりそうであり、いろいろな難民に思いをはせながら読んだ。

内戦にあったらしい国内の対立はもちろんひどい。でも命からがら逃げてきた先での、伝統だの男のプライドだのに縛られた家族内、施設内での対立、収容所の職員の酷さ、対応する当局の対応の冷たさに、どうして人は平和に生きられないのかと腑が煮え繰り返る。地球の一部が自分のものであって、生まれた場所が違ったからって入る権利がないとか何とか。救いは、マディーナにはラウラという友人がいること。人と違うことの辛さを知っているラウラのような存在が、どの子供にもいてくれたらいいなあ。

たまたま同時期に、近所の駅前で、外国人排斥を平然と訴える車を見かけたせいかもしれない。人は不安だから怒り、拒絶するのだという。であればドイツも日本も、その国民自身が安定を感じていないということなのか。解決策の見えない物語の中と現実に心がザワザワする。でもこの心のノイズを避けてはいけない、続編もぜひ読もうと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2025年6月7日
読了日 : 2025年6月7日
本棚登録日 : 2025年6月7日

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