比翼は万里を翔る 金椛国春秋 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2021年2月25日発売)
4.00
  • (20)
  • (35)
  • (17)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 339
感想 : 26
5

最終巻。最終巻!?
読み始めたのが遅かったので、最後まで間を置かずに追いかけられたのは良かったが、完結なのがちょっと淋しい。そして最後は女装はなかった(笑)。

書影を見た時にこれは結婚式の場面だよね? 花嫁衣装着ているのは明々よね!? とヤキモキしたが、前巻で危惧した横槍が入ってしまい明々との結婚が暗礁に乗り上げることに。
相手が沙洋王なんて大物すぎる。これは普通に結婚していたとしても横槍が入っていたことだろう。
なので明々が蔡家の養女になったのは良かった。箔も付くし身分も家格もとやかく言われることはなくなる。
前巻の状況のままでは無理だっただろうが、明々も月香も周芳も想いが叶って良かった。
意外な形にはなったが、遊圭と玄月は表と裏から皇帝を支える柱となるだろう。

朔露との闘いは一段落といったところか。
最終巻でとうとう姿を現した大可汗の迫力と存在感は素晴らしかった。
グルジもジンも普通に接していれば無骨で優しい人間なのだろう。(ジンに関しては別の意味で気の毒だが)
だが戦争である以上、そしてグルジにとって遊圭が絶対の敵となってしまった以上二度と穏やかな対面はないのだ。

陽元も頼もしい皇帝らしくなったと思う。
三代目の足元が固まれば、治世も王朝も長く続くのではないだろうか。
口に出していたとはいえ玲玉との私的な空間でのことだったから、本当に月香の子を手放すとは思わなかった。
今生の別れのつもりだったのかもしれないが、玄月の子となるのであれば将来は官僚になるのではないだろうか。

最後に幼い遊圭を兵に売り渡した薬屋が出てきたのには苦々しい思いがする。
彼女も生き延びるためには仕方がなかったのだろうし、遊圭の両親にしても一縷の望みをかけただけで生き延びられるとは思っていなかったのかもしれない。
あるいは病弱な息子に穏やかな最期を送って欲しかっただけなのかも。
だからといって遊圭が彼女を許す必要はない。
この薬屋は今後陶家と星家から恩と恨み、どちらを多く得たのか怯えながら生きていけばいいと思う。

恒久の平和ではないし、まだまだきな臭い時世ではあるだろうが、収まるところに収まったので良かった。
外伝もあるようなのでそちらも楽しみにしたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2021年3月6日
読了日 : 2021年3月6日
本棚登録日 : 2021年3月6日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする