夏の暑さとじっとりとした、怪談を読んでいるような不気味さが漂う作品。
地方の有力者の家で起こった大量毒殺事件。実行犯を唆した真の犯人を、インタビュー形式で浮かび上がらせる。真犯人を追い詰めるというより、事件のきっかけになった神秘的な少女を取り巻く人々の話。後年現場の発見者である満喜子により当時のことをインタビューして書かれた本が出版される。
皆が「特別な人」としてみていた彼女を満喜子は自分だけが理解していると思っている。他の崇拝する人たちとは違うと思っている。告発する気はなく、自分だけが知っていると彼女に気付いてもらいたくて本を出版する。それは満喜子自身が誰よりも彼女が囚われていたということなのだろう。
彼女はただ思っただけだ。誰に何をしろと言ったわけでもない。周りが彼女の言うことを自分なりに解釈して行動した結果の事件のように思える。とすると彼女は殺人教唆としての罪に問われるのだろうか?
目が見えないからこそ神秘性が増していたらしい彼女は、目が見えるようになったら普通の中年女性になっていた。そのことを知ったら満喜子はどんな思いをしたのだろうか。
周りの人からの証言による真犯人の少女は神秘的で不気味で美しかった。が、読み進めるうちにサイコパス度が減ってしまい、彼女がどうしたかったのかがいまいちよく分からない。
似たような雰囲気だった兄は彼女の異常さに気付かなかったのだろうか。
人はそれぞれ他人に勝手なイメージを持ち接するという印象が残った。
デザイナー・作家・フォントディレクター・写真家の制作日記のような巻末のユージニアノートが面白かった。
- 感想投稿日 : 2019年4月13日
- 読了日 : 2019年4月13日
- 本棚登録日 : 2019年4月13日
みんなの感想をみる