R1.12.18 読了。
・3巻とおして、濃い内容、登場人物の多さなどから、面白いのになかなか読み進められない作品だった。
未解決の誘拐事件や政治家や総会屋などの贈収賄事件、新聞記者やフリーの記者の失踪事件など、一見モヤモヤした後味の悪そうな終わり方だが、犯人側の物井、ヨウちゃん、車椅子の障害児のレディと雑種犬のチビが、青森の物井の生家で穏やかな暮らしをしている光景は、細やかな幸せで穏やかな日々を連想させる。犯人なのに聖域としてそっとしておいてあげたいようなラストが良かった。
・「企業を恐喝するという大それた犯罪も、孫の事故死と同じように、起こるときには起こる人生の1ページだったかのようで、何事かをなし遂げたという達成感はなく、自分という人間の本質が変わったということもない。否、何億かの現金の手応えはあるが、それによって満たされたわけではないという自分という人間のありようが、いまはざわざわ、もぞもぞするだけだった。」
・「『辛いなあ…。』物井は自分自身と、レディと布川夫婦と、自分たちが生きているこの時代の全部の人間に向かって、そう呟いてみた。孫の孝之が亡くなった時と同じように、自分でどうにか出来ることではない辛さだった。…(中略)そういえば、生家の貧窮、隻眼、駒子との別れ、戦争、空腹、奉公先の倒産等々、辛かったことはみんな、自分の力ではどうにもならなかったことだったと思うと、自分の代わりに、腹のなかの悪鬼が声にならない声をあげて慟哭した。七十まで生きてきてたどり着いたところが、ここか。俺は何を受け入れたわけではない、何も納得したわけではない、と。」
- 感想投稿日 : 2019年12月19日
- 読了日 : 2019年12月18日
- 本棚登録日 : 2018年2月21日
みんなの感想をみる