巷説百物語 (角川文庫)

3.78
  • (583)
  • (546)
  • (961)
  • (38)
  • (4)
本棚登録 : 4305
レビュー : 425
著者 :
制作 : FISCO 
てるきさん  未設定  読み終わった 

僕に読書の楽しさを教えてくれた運命の1冊。
今回で読むのは3度目だけれど、読むたびに初めて出会った大学2回生(2004年)の夏を思い出す。
あの頃この本に巡りあっていなければ、今の自分はなかったと思う。

第130回直木賞を受賞した『巷説』シリーズのいちばんのおもしろみは、御行の又市一味が、江戸にはびこる悪事を妖怪がらみの大仕掛けで解決していくという時代小説風の凝ったストーリーにある。
しかし僕はそれ以上に、京極さんの言葉の使い方に魅了された。
圧巻は、「小豆洗い」でおぎんにさせているような一人語りだ。
1人の人物に対話者の発言や質問を代弁させ、それによってただ1人の言葉だけで会話を進行させていくというその手法を初めて知ったとき、僕は本当に感動した。
一方で、啖呵を切るようにまくしたてる又市のセリフも小気味よい。
小説家って言葉を操る人なんだなって思った。

1つ1つの文をなるべく短くすることにより、文が絶対にページをまたぐことがないよう編集されているのも意匠化である作者に似つかわしく、すばらしい(こういう美しさが僕は大好きなんだなあ)。
カバーの装丁も含めて、この本は1つの芸術作品であると僕は思っている。

シリーズで一貫して書かれているテーマは、人の世の悲しさだ。
恨み、妬み、嫉み、憎悪、あるいは想いが届かぬ苦悩。
理屈では割り切れない、ましてやお金では解決することができない人間の負の感情を丸く収めるべく、又市は悪を斬り、大掛かりな仕掛けをくり出す。
生きていくっていうのはこんなにも悲しいことなんだと、又市の背中は読者に訴えかけてくるようだ。

これからの人生で何百冊の小説を読んだとしても、この『巷説百物語』はきっと自分の中で「好きな小説トップ5」に入り続けているだろうな。

レビュー投稿日
2012年11月25日
読了日
2007年6月18日
本棚登録日
2012年11月25日
3
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『巷説百物語 (角川文庫)』のレビューをもっとみる

『巷説百物語 (角川文庫)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

いいね!してくれた人

ツイートする