友愛と敬虔な信仰──シュピーリの精神を包み隠すことなく継承しながら、鎌倉を舞台にまるで植田正治の撮る家族が若草物語を地で生きているかのような純粋で暖かな日常が紡がれる。若い著者は時に自らが描く優しく純情な少女達への愛情を押し隠しようもなく行の表へと迸らせながら、また背景に対比的にジェンダーの片鱗を意識的に差し込みながらも、社会の枠組みに押し込まれる前の子供らしさを全霊をかけて肯定する(この辺りもシュピーリの影響を強く感じる)。傾倒する世界名作児童文学の諸作品の翻案のような筋運びながら著者の強い信念が感じられるだけにその早逝が悔やまれる。
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- 感想投稿日 : 2015年12月6日
- 読了日 : 2015年12月6日
- 本棚登録日 : 2015年11月30日
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