Antifragile: Things that Gain from Disorder

  • Penguin (2013年6月6日発売)
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感想 : 1
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翻訳が昨年出てしまった↓ので、本棚から引っ張り出して数か月かけてようやく読了。
https://www.amazon.co.jp/%E5%8F%8D%E8%84%86%E5%BC%B1%E6%80%A7-%E4%B8%8A-%E2%80%95%E2%80%95%E4%B8%8D%E7%A2%BA%E5%AE%9F%E3%81%AA%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%82%92%E7%94%9F%E3%81%8D%E5%BB%B6%E3%81%B3%E3%82%8B%E5%94%AF%E4%B8%80%E3%81%AE%E8%80%83%E3%81%88%E6%96%B9-%E3%83%8A%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%BF%E3%83%AC%E3%83%96/dp/4478023212/ref=pd_lpo_sbs_14_t_1?_encoding=UTF8&psc=1&refRID=1FBF5Z2QKTMVD3P3Q8FR

 前作『ブラック・スワン』がトレーディング、リスク管理の話が多くテクニカルだったのに対し、本作は、それを現実社会の事例(医療等)に拡張しどういう社会システムを作るべきかという規範的内容まで踏み込んでおり前作よりも示唆に富む内容になってます。
 今作も登場人物は古代ギリシアの哲学者からスティーブ・ジョブスまで多岐に亘り格調高く(第17章 Fat Tony Debates Socratesとか)、相変わらず経済学者(マーコウィッツ、サミュエルソン、クルーグマン、スティグリッツ、ブラインダー先生)が罵倒されてます。
 タイトルの「Antifragile」を初めとして、タレブ用語が沢山でてきますが、親切に巻末に用語集が添付されてます。また、付録Iでは、「Fragile(脆弱)」、「Robust(頑健)」、「Antifragile(反脆弱)」の各概念が、グラフ(ペイオフ図や確率分布図)で判り易く、様々な場面で解説されてます。こちらを見ながら読んだ方が判り易いですね。付録IIでは、経済モデルが「Fragile」になってしまう理由(本来非線形が一般的な経済現象に線形モデルを仮定し、2次の項(コンベキシティ)を無視、パラメータを確率変数ではなく定数とみなしてしまうこと)を、マーコウィッツのEVモデル、リカードの比較優位等で、判り易く解説してます。(最後の、(べき分布ではなく)正規分布においてもパラメータ(標準偏差)推定誤差は、稀な事象になるほど、確率推定誤差が爆発的に増加するという指摘は興味深かったです。)

 本書の内容を大胆に要約するならば、不確実性はどこにも存在するし、予測も計測も困難。(無理にやろうとすると「Fragile」なシステムになる。) 不確実性に対処するには、(ダンベル型を含む)「オプションの買い」の様なポジション(「Antifragile」)を取ること。自然や近代以前制度は、進化の過程で「Fragile」が淘汰され、このポジションのみ生き残っていた。ところが、近代以降、株式会社を初めとする新しい制度により、Principal –Agent 問題が発生し、自分たちが「Antifragile」になるために、他者を「Fragile」にする(≒オプションを売らせる)都合の良い制度を設計する輩が出てきた(アラン・ブラインダー問題)。このエージェンシー問題に対処するには、「Skin in the game」(身銭を切らせること)が必要→次回作 https://www.amazon.co.jp/Skin-Game-Hidden-Asymmetries-Daily/dp/0241300657 に続く。という感じでしょうか。

日本も「Fragile」な代表例(Fukushima、社畜、経産省)としてこれでもかと沢山出てきますw

ダイヤモンドの特集 「反脆弱性――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方」
http://diamond.jp/category/s-hanzeijyakusei 

himaginaryの日記「今日における最も重要な思想家としてのタレブ」
http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20180128/the_importance_of_talebs_system 
 
HONZ「『反脆弱性 不確実な世界を生き延びる唯一の考え方』 ブラック・スワンは予測できないが、備えることはできる」
http://honz.jp/articles/-/44174 

「邦訳に4年かかった謎」タレブの「反脆弱性」(アンチフラジャイル)と次回作のSkinInTheGameについて
http://umenon.com/2017/06/27/antifragile/ 

池田信夫日記「タレブ、福島事故を語る」
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51742840.html

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 経済思想
感想投稿日 : 2018年2月12日
読了日 : 2018年2月12日
本棚登録日 : 2018年2月12日

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