アップ・カントリー 上: 兵士の帰還 (講談社文庫 て 11-3)

  • 講談社 (2003年11月1日発売)
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感想 : 14
4

ポール・ブレナー心の旅路、この小説を一言で称するならばこれに尽きるだろう。
帯に書かれている『将軍の娘』続編という謳い文句は全く正しくない。今回現れるポール・ブレナーは『将軍の娘』で登場した彼は別人のように精彩を欠く。作者自身がポールの人と為りを忘れているかのようだ。ブレナーがブレナーらしくなるのはマン大佐とのやり取りと最後の最後で権力に屈しない一人の捜査官として不撓不屈の戦いを繰り広げるあたり。これこそ『将軍の娘』で見せた凄腕ブレナーの面目躍如たる活躍なのだ。

上下巻合わせて1550ページを費やして書かれるこの物語の概要はこのようなものだ。

アメリカ陸軍基地で起きたキャンベル大尉“将軍の娘”殺害事件を解決したポール・ブレナーはその事件が基で退役し、年金生活を送っていた。そんな彼の元に元上司カール・ヘルマン大佐からある事件の調査の依頼が舞い込む。ヴェトナム戦争中に起きた軍隊内の殺人事件の真相を探ってほしいというのだ。当時殺害の一部始終を見ていたと証言するヴェトナム兵士の手紙が見つかったという知らせがCID―陸軍犯罪捜査部―の元へ入ったというのだった。ブレナーは渋々ながらもこの依頼を受け、かつてヴェトナム戦争で兵士として二度訪れた彼の地へ三度訪れるのだった。

つまりヴェトナムに訪れ、手紙の主を見つけ出し、真相を暴く、これだけの話に1550ページが費やされる。
物語の骨子はこの事件だが、実は内容としてはヴェトナム戦争時代の兵士の回想、それもアメリカ側とヴェトナム側双方の苦い思い出がメインなのだ。
『誓約』でヴェトナム戦争の過ちを大胆に描いたデミルはこの作品を以ってヴェトナム戦争に対して総決算をつけたのだ。だからミステリというよりも冒頭で述べたような回想録というのがこの小説を評するに当たり最適だろう。もちろん冒頭のブレナーをそのままデミルに置き換えれるのは云わずもがなだ。

(下巻の感想に続く)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ&エンタテインメント(海外)
感想投稿日 : 2021年6月8日
読了日 : 2021年6月8日
本棚登録日 : 2021年6月8日

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