『エミール』出版後、逃亡生活を送っていたルソーにヒュームが保護の手を差し伸べるところから二人の物語が始まる。当初は50代半ばの男たちが友情極まって抱き合うほどの交際関係になったが、ヒュームがパリのフィロゾーフたちと結託してルソーを陥れようとしているというルソーの妄想によって、二人の関係は崩壊する。自己の良心にしたがってヒュームを断罪するルソーと、このスキャンダルでどちらに正当性があるのかを世論に判定してもらおうと考えるヒューム、この二人の行動には、彼らの哲学の特徴が現れているというのが著者たちや「解説」の著者の見解である。ルソーの思想について言えば、彼の晩年を支配する自分を迫害する陰謀が張り巡らされているというイメージ、これは端的に妄想であるが、しかし彼の言語が絶大な影響を及ぼしたフランス革命において、革命の敵の陰謀の存在が大々的に喧伝され、それが1793年から94年にかけての恐怖政治の原動力になったことも鑑みれば、ルソーの「陰謀」論をただの妄想として笑い飛ばすことはできない。
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- 感想投稿日 : 2014年12月22日
- 読了日 : 2014年12月22日
- 本棚登録日 : 2014年12月22日
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