喜多川歌麿 (新潮日本美術文庫)

制作 : 日本アートセンター 
  • 新潮社 (1997年8月10日発売)
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感想 : 1
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・江戸の浮世絵師、喜田川歌麿の『深川の雪』は、もともと『雪月花』という3部作のひとつとして、描かれたものです。
 戦後まもなく、この作品が行方知れずになり、図版でしか見ることができませんでした。

 2013年、肉筆画として、ようやく深川の倉庫で発見され、およそ、半年をかけて絵の汚れを取り去り、表層を交換するなどして、2014年に、公開することができました。

 画面は、縦およそ2メートル、横3メートル40センチ。舞台は、深川の料亭です。幼い子供と、見目うるわしい女性ばかりの27人が描かれ、その「群像表現」の細かさには、驚かされます。


 また、描かれたのは、松平定信の寛政の改革による緊縮財政で、あらゆる贅沢が禁止された時代でした。
 そんな状況にあって、江戸の遊興の場であった深川の料亭を描くということは、絵師として、反骨精神の現れでもあったのです。
 幕府は、歌麿を手鎖五十日の刑に処し、歌麿は衰弱してほどなく死んでしまいます。深川の雪は、美人画を得意とした歌麿の集大成であり、最晩年の作品でもあると思いました。


 ※雪月花、他2部作、『品川の月』フーリア美術館蔵 /『吉原の花』ワズワース・アセーニアム美術館蔵

 
 

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 喜歡的東西
感想投稿日 : 2015年2月11日
読了日 : 2015年2月11日
本棚登録日 : 2015年2月11日

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