のっけから比喩のこねくり回しで始まる短編集。安部公房のフォロワーかと思いきや、同世代に活躍していた「戦後派」の純文学の旗手だった模様。
この本の中で、やはり一番印象に残るのは「未来都市」だろう。異常ノイロンを修復し、犯罪は一切起こらない都市における反乱と離脱。アイデアからメカニズムが明確に打ち立てられ、その中での矛盾を見出す。
他の作品も、物語の外殻は非常に緻密で強力なのであるが、つい癖で些細な人の出入りだの感情の起伏だのを追ってしまい、幹であり殻になっている部分を読み飛ばすと、よくわからないまま終わってしまう。
内容は全て難しいわけではないが、動きが少ないので読むのに非常に時間がかかる。文学というより「文芸」というジャンルなのであろう。
また、スノッブな純文学の特徴かもしれないが、ダメな男によろめく女性が出てきて「ホラあなたはスデに私を好きにナッてしまっているではないですか」的な話が多いので、その辺は「よくあるネタ」と言うかたちで読み飛ばせばよいのかどうなのか。
安部公房ほど追ったり追われたりしないので、どうも焦点のあっている部分をフォローしづらい。文はうまいんだけど、外殻ではなく骨を読みたい人間にはあまり向かない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
純文学
- 感想投稿日 : 2016年10月5日
- 読了日 : 2016年10月4日
- 本棚登録日 : 2016年10月4日
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