今年は夏のハインライン月間(3ヶ月位)やります。手始めに軽く短編集から。
ヒトの脳の手術で、未知の領域を切除したら、透視能力が失われた。そこから、脳の隠された通常使われていない領域に、超能力を発揮する部分があることを知った3人は、たびに出る。そこで出会ったのは数十年前に失踪した「悪魔の辞典」の著者ビアスらであった(表題作)。
1作目は監視社会と特殊能力者、2作目は催眠状態に陥ることでパラレルワールドへ飛躍、4作目は火星人と生物デザイナー。どの作品も2つ以上のSF要素を含んでいるため、話があっちこっちに飛躍し、せっかく掴んだ世界観が、数ページ後には普遍化して新しい領域に入っていく。そのせいで、全作品でストーリーもギミックもわかりやすいが、オチがかなり厳しいという印象。
しかし、矢野徹の訳をもしても、なんだかよくわからない訳があるのは、原文が相当凝った話なのだろうとは思う。(追記。矢野徹の訳の本は訳が悪い傾向が高いのがわかりました。なんだかなあ)
これからのSF作家(だけでもないけど)には、こういう作品を読んでもらいたいと思うのは、すべての超常現象に対して、それぞれが突拍子もなく出てくるわけではなく、なぜそれが生じたかというところを短い作品ながらしっかりと検証と説明しているところで、「なぜなら彼はエスパーだからだ」みたいな逃げを打っているものは1つもない所。ペガサスを作っても飛ばない。なぜか?
SFの教科書のような作品である。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
SF
- 感想投稿日 : 2018年6月13日
- 読了日 : 2018年6月13日
- 本棚登録日 : 2018年6月13日
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