風琴と魚の町/清貧の書 (新潮文庫 は 1-4)

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本棚登録 : 60
レビュー : 5
著者 :
地球っこさん 日本文学:著者は行   読み終わった 

手塚緑敏との暮らしを描いた『清貧の書』ほろりときました。
緑敏の一言ひとことが芙美子を変えていく、というか本来の彼女に戻していくようでした。
出会ってきたロクでもない男たち。どうしても抜け出せない貧乏生活。いつの間にか芙美子の心は痛いほど冷たい氷の塊になっていたんだと思います。
尖らなきゃ生きぬくことができなかった芙美子。明るく頑張りやの彼女だったけど、もしかしたらそこに潜んでいる孤独な影を緑敏は感じていたのかもしれません。それを少しずつ少しずつ溶かしていったのが緑敏。それは簡単に溶けるような柔なものではなかったと思います。痛いほど凍える闇の中で、ただ緑敏の掌だけが温もりでした。その中で包まれた芙美子の氷の心。溶けそうになると冷たい風が吹いてまた固まります。まるで氷自身が溶けるのを怖がるかのように震えているようです。それでも緑敏は優しく時にはユーモラスを持って根気よく彼女を包み込みます。
その氷が一気に溶け出すキッカケに感じたのは、緑敏が山の聨隊へ召集された日のキャラメルの甘さだったように思えました。緑敏からの何通もの手紙にやっと返事を出したとき、ついに芙美子の心は温もりで満たされたんだと思います。

レビュー投稿日
2017年11月10日
読了日
2017年11月10日
本棚登録日
2017年11月10日
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