丹生都比売: 梨木香歩作品集

著者 :
  • 新潮社 (2014年9月30日発売)
3.79
  • (50)
  • (108)
  • (64)
  • (13)
  • (3)
本棚登録 : 942
感想 : 106
5

本をとじる。
はぁ。泣きそう。大好きな梨木さんの世界。感想が書けない。具体的な言葉が出てこないよ。
霧深い静寂な森のなかを、ひとりで彷徨い歩いているような感じだった。
森へ一歩足を踏み入れたときには、何をしにいくのか、どこに向かうのか、目的や辿り着くべきところがあったのだろうけれど、気がつけば、それらのことは何の意味も持たずに、只々ゆっくりゆっくりと歩を進めている。

そう。自分の心のなかを、冷めた自分が外側からじっと眺めている感じ。時折、どんよりした闇が胸の奥底から湧き出ては、何かに追われているように、動悸が激しくなる。

それは、わたし自身?

鼻の奥がつんと痛くなるような、哀愁と切なさと、戻ることの出来ない記憶のなか。しっとりと濡れた足元。それをじっとみつめるわたし。

確かに、胸奥の深い森へと還って行く作品集。見失っていた自分に立ち返るために。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学:著者な行
感想投稿日 : 2014年12月7日
読了日 : 2014年12月7日
本棚登録日 : 2014年12月4日

みんなの感想をみる

コメント 3件

猫丸(nyancomaru)さんのコメント
2022/04/02

地球っ子さん
梨木香歩の世界は、戒めのように思えてしまうと同時に、差し伸べた手が期せずして自分自身に返ってくるような優しさを感じます。
やっと久々に「家守綺譚」を読み終えて或る想いを強くしています。そして次は「丹生都比売」を読み返そうと、、、

地球っこさんのコメント
2022/04/02

猫丸さん、こんばんは♪

私が梨木さんの世界に時々帰りたくなるのは、猫丸さんのおっしゃる戒めと優しさを感じたくなるからかもしれないなぁと気づきました。

最近無性に梨木さんの本を読みたくなってきました。
というのもネイチャーライティングという分野を知ったからです。
梨木さんの世界観もそこにあるようで。
しばらくは、私のなかでネイチャーライティング・ブームが続きそうです(’-’*)♪

猫丸(nyancomaru)さんのコメント
2022/04/02

地球っ子さん
おー確かに「ネイチャーライティング」ですね。畏敬の念があるからこそ、サラリと人智を越えた世界を描ける、、、

ツイートする