舟を編む (光文社文庫)

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本棚登録 : 8124
レビュー : 788
著者 :
地球っこさん 日本文学:著者ま行   読み終わった 

なにかを生みだすためには、言葉がいる。

この世に言葉が生まれた瞬間を想像してみました。
例えば、ただ荒涼と広がるばかりだった大地に、草木が芽吹き色鮮やかな花が咲き乱れ、灰色だった空は刻一刻と色を変えていく。凪いでいた海は波音を響かせ始め、吹き荒ぶ風は、まるで怒りを鎮めたかのように人の頬を優しく撫でて消えていく。
言葉が生まれたことによって、世界は時を刻みはじめ色づきだしたのではないかと思えるのです。
ただそこにあると認識していただけのものに、ちゃんと意味があるんだと知ることが出来たのだから。

そして、言葉は見えない感情をも表すことが出来ます。
頭に浮かぶ突拍子もない閃きも、心に宿る灯火のような温かな愛情も、ポッカリ穴のあいたような空虚感も。それらを言葉によって紡ぐことが出来た時、人は体中を感情の嵐が駆け巡り身を震わせたのではないだろうか、なんてことを更に想像してしまいました。
そう、わたしはこれが言いたかったのだ、と。みんな聴いてください、と。

言葉へ真摯な態度で向き合う人々がいることを知ったことで、言葉について改めて考えてみることができました。言葉を愚直なまでに追い続ける彼らのおかげで言葉は今もわたしたちの生きる道を照らす道標になっているんだと思います。
彼らの想いを知ってしまった今、もう言葉をぞんざいに扱うことは出来なくなりました。
と同時に、言葉を扱う辞書の危うい存在意義に対して今まで全く考えたこともありませんでした。言葉を生み出す心は、権威や権力とはまったく無縁な、自由なものでなければならない。
これって当たり前のようでいて、いやいや世界では実は当たり前ではないところもあるぞと今さらながらその恐ろしさに愕然としました。
人が人として生きるためには、言葉は自由なものでなければいけないのです。

最後に一番心に残ったのは、言葉があるからこそ、大切な人がいなくなっても思い出が、記憶が心に残っていく。語り合い、伝えあっていくことができるということです。
なんて言葉は貴く綺麗なものなのでしょう。

レビュー投稿日
2017年11月26日
読了日
2017年11月26日
本棚登録日
2017年11月26日
18
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