作家デビュー30周年記念作品で、“これまでのわたしの小説をぶっ壊してみたかった。
そしたらこんな作品が出来ました。“という。
2015年に上梓され、2018年には映画化されています。
東野作品の多くは、時事的な話題の問題に科学的な要素を加味して、論理を構築し情念に訴え、最後の着陸地点に“なるほど”と思わせる驚きと感動と余韻が魅力的だと思う。(個人的な感想です)
この作品はとくに東野作品のファンでなくても読めます。
主人公(羽原円華)は、母の郷里北海道で、竜巻に遭遇し母を亡くした。父で羽原全太郎は、脳神経外科医師で、彼にしか出来ない手術を控えていたので、北海道には同行できなかった。
甘糟才生は、鬼才の映画監督だ。娘が自宅で家族がいる時に、硫化水素自殺を図った。その時、妻と娘は死亡し息子の謙人はなんとか一命を取り留め、植物状態になったが、羽原医師により身体の機能が再生できたのだ。謙人は手術により、「周囲の物理現象を見るだけで極めて高い予測が可能になる」という超能力を持つことが出来たのだ。
麻布北署の中岡刑事は、不可解な事故死に疑問を抱き、秘密裏に捜査を始動する。
一方、温泉地で起きた硫化水素ガスによる中毒死が、事故死であると不確かな情報で、納得せざるを得ない青江は地球化学専門の大学教授。
青江「どういうことだ。どんな手品を使った。」
円華「仕掛けなんてないよ(省略)」
青江「それはわかっている。何故拡散しない?」
円華「じゃああたしから訊く(中略)どんな条件下でも同じ現象が起きなきゃいけないわけ?」
青江「それは…」言葉を続けられなかった。
科学的には彼女の指摘の方が正しい。
円華は、予知は出来ないが、予測はスーパーコンピューター並に根拠を科学的に計算できる。不思議な少女に育った。
読書は楽しい。
- 感想投稿日 : 2023年7月10日
- 読了日 : 2023年7月6日
- 本棚登録日 : 2020年11月3日
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