この本はさくらももこがモーニング娘。のメンバー一人ずつと一緒にあちこち出かけて、その様子を綴るという内容の本でして、さくら氏の娘たちを見る視線がとても温かく、読んでいていてほのぼのとした気持ちになるのです。そしてそこに描き出される娘たちの姿も非常にリラックスして楽しそうなんですよ。例えばこんな感じ。
>辻ちゃんはマップをジッと見ながら
>「ええと、これも絶対食べたいし、これも。あ、これも…」と言って、
>結局全部を指したので、野上さんは頭を抱えた。
正直この一文のために2000円払っても惜しくないと思いました。
こんな感じで、とにかく誰に関する章でも、何度となく萌え転がるポイントが出てきます。
思ったんですけど、モーニング娘。ほどの知名度を持ってしまうと、こういう仕事ってのはなかなか実現しにくいんじゃないですかね。例えば自分が仕事で娘たちと仕事で関わるという状況を想像すると、それは当然自分のステイタスアップにつながる大仕事なわけで、売名とまではいかなくてもやっぱり必要以上に気負いってモンが出てしまうと思うんです。良い本にしよう! 良い話にしなきゃ!って。でもそういうのってきっと娘さんたちをも気負わせてしまうだけだと思うんですよね。だからこの企画を実行できるのは、何かの道で充分にステイタスを既に持っている人じゃないといけない。かと言ってそれが「直木賞作家」とか「何かの大御所」ってんじゃ娘さんたちは萎縮してしまうわけで、娘たちの方も相手を知っていて親近感を持ってくれるような人じゃないといけない。さらに言えばやっぱり異性ではダメだし(娘的にも、ファン的にも)、自分のことと重ねてしまったり、敵愾心を持ってしまう同世代でもダメ。そう考えるとやっぱり他の誰でもないさくらももこだからこそ実現した本なのだなぁと思うのです。あとはやっぱりさくら氏自身がをすごく好きで、そしてとてもナチュラルな人柄だというのが大きいんでしょうね。
ちなみに、この本にはさくら氏自身が撮影したという写真も掲載されているんですが、これがまた良いんですよ。もちろん写真集に比べれば技術的には劣るわけですが、メンバーのすごく気を許したリラックスした表情が撮れています。
あと、なにげに全編を通してメンバーのマネージャーである野上さんの話もポイント高いんじゃないでしょうか。野上さんが、よそに行った時にちゃんとできるようにマナーや礼儀をメンバーに教えてるという話なんか、ちゃんと「よそ様の子を預かってる」って感じがしますしね。UFAの上の方がどう思ってるかは知らないし、いろんなビジネスの事情も当然あるんでしょうけど、組織の中に娘の方を向いていてくれる大人がいて、緩衝材になってくれたり、人間として接してくれてるってのはファンにとっても当然喜ばしいことです。『ハコイリ娘。』では今まで見えなかったそういう部分が見えたのも良かったです。
あとはやっぱり娘たちがね。
さくら氏の目に映った娘たちが、本当にみんなかわいくて、良い子で、頑張り屋で、当り前の女の子で……。それがあんなに一生懸命歌を歌っているんだと思うと、なにげない楽しいエピソードを読んでるだけなのに、なんだか泣けてきたりします。それはやたらと悲壮感を盛り上げる類のものじゃなくって、うまく言えないんですけど、なんだか祈りのようなもので胸がいっぱいになってくるのです。
- 感想投稿日 : 2009年6月22日
- 本棚登録日 : 2009年6月22日
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