21世紀の資本

  • みすず書房 (2014年12月8日発売)
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感想 : 15
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資本(ストック)と国民所得(フロー)、資本と労働の分配、経済格差の問題を100年以上のスケールで論じたもの。
文量が多く途中飽きを感じたが、論理は明確で分かりやすい。複数の本に分けても良いぐらいに情報が詰まっている。

著者の主張を大分ざっくりまとめると以下のようなもの。

・20世紀前半の欧米諸国は現代以上に格差の大きい世界。二度の世界大戦を経た資本ストックの棄損や重税を受けて格差は大幅に縮小。一方、ここ20〜30年はこの格差が再び拡大している。
・この300年で資本の形態は、大部分の農地から住宅+その他の金融財産等に変容。
・資本所得は労働所得よりも格差が大きい。
・20世紀は労働所得の重要性が高まった時代。金持ちでも貧民でもない中間層が出現。
・歴史的に資本収益率(r)は経済成長率(g)よりも高いのが定常状態。そのため、資本には加速度的に累積される性質がある。
・低成長が見込まれる21世紀は、資本の格差が拡大する懸念。格差是正には、資本自体に課税する累進的な資本税を世界的に導入する必要。

巷のピケティ論は本書を読んでないと思われる理解の誤りや、ただ自論への我田引水に利用するものも見かけるので、本書を実際読むのが良いと感じた。
本書では「資本家vs労働者」のような階級闘争の図式が導入されているわけではないし、政治思想よりは経済学のアプローチを徹底して採用しているのも良い点。
私自身も極端な経済格差が正当化される社会は良くないと思っているし、そうした格差を制限しても経済効率を損なうことはないだろうと考えているので、著者の主張は大分共感できた。

また、話の大筋とは関係が薄いが興味深かったのは、経済発展のため資本規制を容認している点。外資を制限しつつ貿易面では自由を享受する中国の政策を評価しているところは面白かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 経済
感想投稿日 : 2019年3月2日
読了日 : 2019年2月27日
本棚登録日 : 2019年2月28日

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