雨の中の涙のように

著者 :
  • 光文社 (2020年8月18日発売)
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本棚登録 : 472
感想 : 76
5

人々を魅了するオーラを放つ大スター堀尾葉介とどこかで接点のあった人々の人生が描かれた短編連作。
後悔と哀しみを抱え、過去に縛られて佇んでしまった人々が、一歩前に踏み出す8つの物語は心に染みる。
読み進めるうちに堀尾葉介の実像が浮かび上がり、背負ってきたものの重さに愕然とする。救いを得るために払った犠牲は決して小さくないが最後、葉介自身は悟ったように明るい。人はつらい想いをした分、優しくなれるのか?人々を魅了する葉介のオーラは、彼の心の有り様が滲み出ているからなのか。

雨の日の切ないシーンが多い。
雨の日の思い出は、雨が降ると思い出すとある。最後の章、雨の日に過去とシンクロするような出来事が葉介に起こる。
「想い出も時と共に消える。雨の中の涙のように」タイトルになった映画の台詞。
雨の中で流される涙は誰にも気づかれない。もしかしたら自分自身もどれだけたくさんの涙を流したか気づいていない時もあるかもしれない。
雨が重要なモチーフとなり、閉塞感や肌寒さ、切なさが雨のように心に降り注ぐ物語だが、つらい想い出はいつか消えていくのだと、読後感の雨のイメージは包み込むように優しかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年10月27日
読了日 : 2020年10月27日
本棚登録日 : 2020年9月17日

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コメント 2件

まことさんのコメント
2020/10/28

koringoさん。こんにちは。

いつも、いいね!ありがとうございます。
私も、この作品を読みました。
korinngoさんのレビュー素敵ですね!
雨のところの描写がなんとも言えません。
こんな素敵なレビューが書けるなんて…。
うっとりしてしまいました。
ただ、レビューが素敵だったのをお伝えしたくて、コメントさせていただきました。
たいした、レビューは書けない私ですが、これからもよろしくお願いします(__)

koringoさんのコメント
2020/10/28

まことさん
過分なお言葉ありがとうございます。
まことさんのレビューも拝読してました。良いお話でしたね。
まことさんを始めレビューを書かれている皆さんのお陰で良い本に出逢えることに感謝しています。
まことさんのレビュー、これからも楽しみにしています。よろしくお願い致します。

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