時間のかかる読書 (河出文庫 み 27-1)

著者 :
  • 河出書房新社 (2014年12月8日発売)
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本棚登録 : 421
感想 : 20
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もし本書を読まずに『機械』だけを読んでいたら、主人がお金を落とすというのは、落としたと称して実際は誰かにあげてしまってるのかな、と解釈したかもしれない。「困っているものには自分の家の地金を買う金銭まで遣ってしまって忘れている」という記述や、夜中に細君の部屋に忍び込んでお金を盗るくだりなど、その解釈が暗示されているフシもある。
...が、そんな平凡な読み方など一切せず、主人は持ったお金を文字通りに「落とす」という前提で話は始まる。最後まで飛躍的で強引な想像ばかり重ねながら、その点だけは他に解釈の余地がない。なるほど、そこが『機械』のツボであり、無限に楽しく読み続けるコツなんだな..と思ったりした。
小説の根っこの部分で何か自分にとって不思議な思い込みを入れられると楽しい。稀に天然の誤読でそうなるときがあるけど、意外と気づけず、強引に辻褄を合わせて読み続けられたりする。そういうときの人間の創造力はなかなか凄いと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本のエッセイ
感想投稿日 : 2024年5月19日
読了日 : 2024年5月19日
本棚登録日 : 2024年4月4日

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