レーモン・クノーに認められ、ヨーロッパ社会へと紹介された快作。
10歳の頃から「やし酒飲み」だった主人公が、死んだ「やし酒作り」の代わりを探す冒険譚。冒険譚と聞けば成長小説を第一に考えるが、出だし早々、この小説はそんな先入観を破壊してくれる。
幽霊、化け物、精霊が代わる代わる登場する。やし酒「中毒」による幻覚なのか、アフリカ世界の世界観なのかは判断しかねるが、物語は荒唐無稽にあれよあれよと転びながら進む。アフリカの密林を舞台にしたアル中男による『不思議の国のアリス』といった感じだ。
チュツオーラは、ナイジェリアの作家であるが、この小説は英語で書かれている。英語とは言っても、アルファベットを用いてはいるものの、英語とはかけ離れた文法語法を駆使して書かれているらしく(意図的なものかどうかは不明)、翻訳作業はかなり厄介だったそうだが、原文の乱れっぷりが翻訳にも見事に再現されいる。
物語だけではなくテクストまで何でもありなのは、まさにアフリカ文学だ。
強めのお酒を片手にどうぞお読み下さい。
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カテゴリ:
外国・文芸
- 感想投稿日 : 2012年9月12日
- 本棚登録日 : 2012年9月12日
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