(No.14-10)
『2011年3月11日午後2時46分、小説家・大友玄は担当編集者・神崎貴恵と東京渋谷のラブホテルにいた。二人とも結婚しており、つまりは不倫だ。もしかしてここで死ぬのか?
テレビの臨時ニュースで大変な事態が起こっていることを知り外に出た二人は、それぞれの自宅に向って歩き出した・・・。
句会を題材にした小説を書いた縁で「俳句展望」という俳句総合誌に連載を持っているからだろうか、俳壇の重鎮窪嶋鴻海が文化功労者になった祝賀パーティーへ招待された玄。そこで誘われ鴻海が主宰する朱夏俳句会に出入りするようになった。
その前後に亡き母が朱夏の会員だったことを知った玄は、母の遺品の中から句集を見つけた。
亡き母の残した句と鴻海の句にほとんど同じものを見つけた玄。
そして鴻海は「おくのほそ道」に描かれ、震災で被災した石巻への旅を、玄と同道したいと希望してきた。出版社に依頼された特別作品のための取材旅行。老齢の鴻海にとっておそらく最後の旅をなぜ玄としたいというのか。それは母と何か関係があるのか、悩みながらも玄は依頼を承諾した。』
私は初めて読んだ作家さんです。私の好みとはちょっとずれてるのですが、「震災後、おくのほそ道をたどる旅をする」ということに惹かれて読みました。
あの震災後、東日本の方には申し訳ないほど私の生活は平常でした。この小説で、いろいろな報道で心配したりしながらも、祝賀パーティーや句会など結局いつもどおりの生活を送る玄たちの姿を読み、一時影響があった東京でも早い段階で平常にもどってしまったのかなと思いました。
そういう中での石巻への旅。ずっと付き添ってくれるタクシー運転手・高瀬に好感が持てました。
芭蕉に対する曾良のように鴻海を世話するはずが、どうも役に立てない玄に代わりてきぱきとやってくれる高瀬さん。彼が時々語る震災のこと。作者は東北の想いを彼に語らせているんだなと感じました。
そして玄の生活は、結局震災が契機になって大きく変化していきます。
震災後の日本を描いた小説として、読み応えがありました。読んで良かったです。
- 感想投稿日 : 2014年4月11日
- 本棚登録日 : 2014年4月11日
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