8分音符のプレリュード (Y.A.Books)

著者 :
  • 小峰書店 (2008年9月1日発売)
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本棚登録 : 233
感想 : 33
4

(No.13-33) 児童書です。

『中学2年生の秋山香南は、勉強もクラスの仕事も手を抜かない真面目な優等生。先生からも褒められ、それを嫌っていやみを言うクラスメートや、香南に任せておけばいいやと日直の仕事もしないクラスメートもいる。でも今さらやめるわけにもいかない。

若い女性の担任教師・新藤先生は香南のあこがれ。その新藤先生から今度来る転校生の面倒を見てあげて欲しいと頼まれ、不安を感じながらも引き受けた。転校生についての詳しい情報を全く教えてもらわないままで。
香南はいろいろ準備して保護者気分になっていたが、転校生・波多野透子は独特の雰囲気を持ち、他を全く拒絶する気難しい少女だった。そのうち透子の過去がクラスメートに知られると、一気に透子は悲劇の主人公。彼女のために努力する香南は逆にクラスから浮いてしまう。
何の情報も与えられなかったのに頑張って、でも成果もなくただ他の人から透子の窓口として便利に扱われる状況に、ついに爆発してしまった香南。
もう優等生なんかやってられない!先生なんて大嫌い!』

香南は自分が優等生を演じていたように思ってしまいましたが、でもやっぱり彼女は優等生なんです。自分自身をきちんと見極めることが出来るからこそ、自分で自分を追い詰めてしまった。もっといい加減な性格だったらここまでにならなかったのにと思って、読んでてとてもかわいそうになりました。
香南は秀才、そして透子は天才です。秀才が努力してやってきたことを、天才は軽々と飛び越える。そのことを突きつけられると辛いですね。

私が一番いやだなと思ったのは新藤先生のやったことです。転校生と同じ立場のはずのクラスの生徒に、先生でも持ち重りがする生徒の面倒を見てやって欲しいと頼む。気を配ってあげるだけでいいからと言われても、ただ見ているだけでは気を配ってることになりません。やっぱり何か話しかけないわけにはいかないのに、基本的情報は与えない。
しかも先生個人のことについて、結果的にですが嘘をついてしまってます。生徒に対する裏切りで、かなり罪が深いと思う。
でも現実にこういう先生っていそうだわ。他人を全面的に信ずるな、頼まれても納得出来ないことは引き受けるなという教育をしたことになったのかな。

救いはクラスメートの男の子・シーナ君の存在。でもこういう子って実はいそうもないわ。この子がいなかったら物語がものすごく暗くなったと思うので、作者の配慮でしょうか。

難関を乗り越え香南と透子が共に大きく成長していく物語で感動しました。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 児童書
感想投稿日 : 2013年6月5日
本棚登録日 : 2013年6月5日

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