(15-14) 「遠い日の呼び声」が良かったのでこっちも読んだ。うーん、って感じ。それぞれの短編で、主要登場人物のほとんどが私が好感が持てない人だったから。私は中途半端にオバカな男の子が出る話が好きじゃないんだわ。女の子ならいいかというと「屋根裏の音」ではぞっとしちゃった。だからこの本の中で良かったな!と思った話は「墓守の夜」と表題作「真夜中の電話」。どっちも大人が主人公。特に真夜中の方は、他の人の回想の中でしか出てこないハリーに会いたいと思った。

(No.12-5) 児童書です。

内容紹介を、表紙裏から転載します。
『クリスマス・イヴ、雪のふりつもった美しい町をとおって、ぼくは父さんが働いている工場へおつかいに行った。すると、エレベーターの中で不思議なものを見た・・・。
壁の鏡にサンタクロースみたいなおじいさんの顔が映ったのに、振り返った見たらほかにはだれも乗っていなかった。ぼくが何の気なしにその話をすると、父さんとなかまの人たちの顔色が変わった。エレベーターには、工場をはじめたオットーという老人の幽霊が出る。だれかがオットーを見ると、その日工場で事故が起こり、死人が出るというのだ。どうしよう、今日事故にあうのが父さんだったら・・・?

1930年代のイギリスの小さな町を舞台に、男の子の冒険と、父と息子のきずなを描いた、心に残るクリスマスの物語。
作者ウェストールの回想記を併録。』

併録されている回想記は「島」「油まみれの魔法使い」の2編です。

短編としてどこかに紛れてしまいそうな短い小説です。これを回想記を併録したとはいえ一冊で出版してるのは徳間書店の本気振りが伝わってきます。ちゃんとその価値があるんだという。

私はそうたくさんウェストールの小説を読んではいないのですが、それでも気になっていたことがあります。父親、または父親格の男性に対するこだわりと、女性に対するこだわり。父親に対してと母親に対してが違いすぎる気がしてました。
この小説は自伝的なことを元にしているものらしいので、読んでみたくなりました。

この小説や回想から感じられることは、ウェストールは幸せな子供時代を過ごしたんだなということ。家族や周りの大人たちにとっても可愛がられています。お母さんやおばあさんとの関係も良好です。お母さんはやや過保護かもしれませんが・・・。
もしかして女性のことはウェストール自身の妻との何かなのかなと、訳者あとがきで思いました。
そして彼は、お父さんのことが本当に好きで尊敬してたんですね。こんなに真っ直ぐ父を愛することができる少年は幸せだと思います。

ウェストールは、父が働いていた工場が「指輪物語」に出てくる光景にそっくりだったと書いています。恐くはなくて魅力的だったと。
でも工場のシーンを読んだ私が連想したのは「天空の城ラピュタ」の最初の方の場面。パズーが弁当を届けるところです。大音響の中で機械が動いていて、おじいさんがいかにも技術屋という感じで働いているシーンです。宮崎駿さんはウェストールが好きだと聞いたことがあります。何かイメージを投影したのかもしれないなとか想像しました。

小説は作品としてそれだけで独立したものです。でもやっぱり作者のことを知っていたほうが、より理解でき楽しめるでしょう。
ウェストールのことがいろいろ分かり、この本を読んで良かったと思いました。

(No.11-81) 徳間書店の児童書です。

内容紹介を表紙裏から転載します。
『全寮制の学校に通うサイモンは、ママが再婚した売れっ子画家ジョーの家で夏休みを過ごすはめになる。パパが死んだ今でも、強い軍人だったパパの方が絶対かっこいいと思っているサイモンは、新しい生活にどうしても馴染めない。うつろな気持ちで広いカブ畑を歩いていたとき、古い水車小屋を見つけ、強く心惹かれるサイモン。だが、その日を堺に継父との関係はますます悪化し、ある日ついに「それ」が姿を現した。ぼろぼろの三体の「かかし」だ。かつて忌まわしい事件があった水車小屋に巣食っていた邪悪なものを、サイモンの孤独な心が目覚めさせてしまったのだ。日ごとサイモンたちの住む家に近づいてくる「かかし」。目の錯覚などではない。サイモンを待つのは、破滅か、それとも・・・。

継父への憎悪を募らせるたび、追いつめられていく少年の心理を鮮やかに描く、イギリス児童文学の巨匠ウェストール、二度目のカーネギー賞受賞作。』

サイモンは死んだお父さんが大好きで誇りに思っています。それと同じようにお母さんが大好き。参観などで学校にやってくるお母さんは、他のお母さんより振る舞いが洗練されていてそつなくて嬉しい。
でも、サイモンのお母さんは母親としての演技をしているように私には見えてしまいます。なんていうか久し振りに会った息子に対して冷静すぎる感じ。この人本当に息子を愛しているのかな?と疑問に思いました。
あからさまには書いてませんでしたが、お母さんはそれほど夫を愛してなかったみたいだなとそのうち感じてきました。結婚するのに適当な相手だったから結婚し、調子を合わせていただけかもしれません。
本当に愛しあうことが出来るジョーと出会って再婚し、前の夫に似ているサイモンがジョーを嫌っていることをうっとおしく思っているようです。
サイモンの、お母さんが好きでたまらない気持ちを分かってあげていない彼女に苛立ちを覚えました。

そしてまだ小学生の妹のジェーンのこと。サイモンはジェーンのことも好きなのですが。ジェーンの中の「女」は充分母親と張り合うくらいあって、読んでいて気持ちが悪いくらいでした。
ジョーはジェーンのことを子供だと思ってそれなりの相手をしていますが、数年後のことを考えると恐ろしくなります。お母さんがそのことを分かっているらしいことに驚いてしまいました。

一家四人のうち、男一人に女が二人、少年がはみだして孤独になるのは当たり前で、サイモンがかわいそうでなりませんでした。
これではサイモンがかかしを呼び寄せても無理ありません。

トリスの登場はかなり唐突で無理っぽい感じがします。でも外から誰かが来ないと、サイモンだけではどうにもならないところまで来てしまっていたということなんでしょう。

サイモンはジョーのことを嫌っていましたが、読者としてはそれほど嫌な人には思えません。でもサイモンが大好きなお母さんには、好感が持てませんでした。どちらかというと嫌悪感が・・・。妹のジェーンにはぞっとします。
あの水車小屋に昔住んでいた女性にも、到底好感が持てませんでいた。

これを多感な少年が読んだら、女性不信に陥りそうだわ。それとも登場する女性の不気味さに気がつくのは私が大人の女性だからかしら。
少年はもしかして気がつかない?

(No.11-75) 徳間書店の児童書です。

内容紹介を、表紙裏から転載します。
『ぼくがヴァレリーに出会ったのは、14歳のときだった。赤く長い髪が美しいヴァレリーは金持ちの娘、ぼくは労働者の息子だったけれど、ぼくたちは惹かれあい恋に落ちた。はじめは彼女の家の庭で、やがて川沿いの道や海辺の岬にある廃墟を散歩しながら、一緒にさまざまなものを見、話をし、初めてのキスをした。ほどなく戦争が始まり、町が爆撃を受けるようになっても、ぼくたちの上にはいつも太陽が輝いているような気がした。でも病弱なヴァレリーは、自分にあまり時間がないことを知っていたのかもしれない。だからぼくにあんなことを言ったのだ。「いつかわたしが迷子になったら、かならず見つけてね」そうするよ、とぼくは約束した。それが、決してしてはならない約束だとは知らずに。

イギリス児童文学の巨匠ウェストールが描く、せつなく、恐ろしく、忘れがたい初恋の物語。』

邦訳の題名は「禁じられた約束」ですが、原題はただの「THE PROMISE」です。私は元もとの題名のほうが好きです。「禁じられた」って、本当は誰も禁じていないもの。ついほだされて約束しちゃっただけ・・・、なんだよね。

本の1ページ目から、たちまち物語りに引き込まれました。ああ、こういうのっていいわ!
読み始めてずいぶんたってからこれ良いかもという本もあるけど、この本はまず表紙を見たときからビビッと感じて、これは絶対私の好みだと思ったので。

恋の物語なんですが、ぼく(ボブ)は奇麗な女の子に憧れてはいても、本当は恋をしていなかったかも。女の子(ヴァレリー)もボブに恋していたというより、自分の身に苛立ち誰かに恋されたいという思いだったような気がします。
普通だったら、よくある思春期の恋に恋する年頃の経験で終わったかもしれません。それが初恋というものかしら。

ボブの両親やヴァレリーの両親の行動や思惑には、ちょっとどうなのよと文句を言いたい部分もあります。でも、ボブのお父さんだけでなく、ヴァレリーのお父さんも最後にはボブのことを一番に考えてくれました。そこが良かったです。

子供の頃にはよく分かっていなかった「死」を深く感じ考えるボブの姿は危なっかしくて、心配でたまりませんでした。
ボブの問題と戦況がシンクロしていき、ラストへの高まりになる構成は感動的です。

これは児童書ですが、繊細で感受性の強い子だと死について考えすぎてしまうかもしれません。かといって、この小説に出てくるベリーみたいにがさつな子にこれを読まれると、なんだか汚されるような気がして嫌だわ。
どんな子に読むように勧めるべきかすごく迷ってしまいますが、児童書が好きな大人には是非勧めたい、そんな本です。

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