「人が真に神のものとなる時、かれはもはや少しでも神よりほかのものに心惹かるることを許されないようになる。……かくて他の人ならば当然許されるであろうような、それ自身決して悪にあらざる、あるいはむしろ美しくさえあるような生のよろこびさえ、かれからは奪われ禁じられるようになる。……それはその人が霊的に極めて高い境地にまで到達したことの微証であるとヒルティは言う」(99頁)。日本のヒルティと呼ばれる著者は、明治期から第二次大戦中まで生きた法学者にして無教会派クリスチャン。内村鑑三以来の固い福音主義信仰を堅持しつつも、新渡戸稲造らの教養主義によって育まれた。古代ギリシャ思想から説き起こして真の幸福の道はキリスト教信仰にあることを説いている。しかし護教的な刺々しさがなく、例えばソクラテスに見られる真理契機なども非常に高く評価している。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
思想・社会
- 感想投稿日 : 2007年8月25日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2007年8月25日
みんなの感想をみる