「悪人」と「俺俺」を彷彿とさせる小説を読んでいるようだった。但しというかだからこそ、いろんな事実や環境・状況をつなぎ合わせて、著者の筆力をもって見事にストーリー化されており、著者の思い込みや決めつけもないとは言えないような。
前日に被告の手記を読んだが「なぜ動機を盛るのか?」という項目で、本書や巷で言われている動機(母・学歴・外見・女・雇用等々)を本人はことごとく否定している(それはあんたのコンプレックスでしょ?と切り返しているのは見事)。ここは被告の言っている事もわからなくはない。なんでも平均からちょっとズレて不遇な人間だからって考えがそもそもオカシイ。そんな人間はいくらでもいるし。が、本人が真実を語ってるとは限らないし、かと言って犯行の遠因や影響は誰にもわからないし、本人が気が付いてないのかもしれないし。結局は外部がああだこうだと分析するだけなのかもしれない。
事件当初は被告への共感があるという事が理解できなかったが、この本を読んで何となくわかった感じ。話としてはたいして珍しくもないやや不遇な孤独感・疎外感を抱えた青年(と言っても人間関係には平均以上に恵まれているような気さえするのでそこは逆に驚きでもある)であり、太宰治や尾崎豊的共感に近いのかな?という印象を持った。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2013年5月30日
- 読了日 : 2013年5月30日
- 本棚登録日 : 2013年5月15日
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