悪友

著者 :
  • 書肆侃侃房 (2020年8月5日発売)
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感想 : 7
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「ローソンが潰れてできた大きめのローソン 性善説を信じる」(32頁)
神の見えざる手が働く市場の性善説を信じたくなる出来事である。日本では市場原理を敵視する公務員的管理主義の発想が根強い。店舗の新規出店を市場原理に委ねると、チェーン店が個人経営の店舗を駆逐する一方、チェーン店は採算が取れなくなれば簡単に撤退してしまい、住民は買い物難民になるとする類の見解である。
しかし、市場原理は需要があれば需要に応えるものである。むしろ、公務員的な管理主義は需要ではなく現状の供給から逆算して考えがちである。病院のキャパシティがオーバーするから、入院をさせずに自宅療養でしのいでもらうというような。

一方で本書は海外旅行という非日常を詠んだ短歌もある。日本文学独特の表現形式の短歌と海外の組み合わせには妙味がある。西行のように旅と和歌の組み合わせは昔からあった。

「カタルーニャ国旗はためくバルコンに沿ってジェラート屋にめぐりあう」(70頁)。
スペイン旅行の短歌。カタルーニャはスペインの自治州であるが、独自の歴史や言語を持ち、2017年10月にはカタルーニャ共和国として独立宣言が行われた。日本人は同質性が強いために意識が低いが、独立を求める人々の熱い思いが感じられる。

さらに本書には漫画やアニメから詠んだ短歌もある。漫画やアニメは現実の体験ではないが、そこから本人が感じたことは本人にとって本物の感覚である。日本には直接体験でなければ経験ではないという風潮が根強いが、「我あり、故に我思う」ではなく、「我思う、故に我あり」である。

「怒りをごまかすことなく、恨みを美化することなく、進んでいきたい」(126頁)。これは表現者の正しい精神である。文章を書くことは過去にこだわることである。日本には過去を水に流すことを美徳とする愚かしい傾向があるが、奴隷根性を増やすだけである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2021年10月3日
読了日 : 2021年10月3日
本棚登録日 : 2021年10月3日

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