私たちの現実世界で仮に世界でたった一人しか友人がおらず、自らが発する一言で友達を傷つけてしまうかもしれないとおびえたとき、本心ではない嘘の言葉を伝えてしまう可能性もある。しかし、土神の正直な性格で荒れた行動が伝えたかったことは、真の友情とは嘘のないありのままの自分を受け入れてくれるものだとわかった。表面上の付き合いというのは多く存在するが、作品の中の土神が求めていたのはありのままを受け入れてくれる真の友情なのではないか。
宮沢賢治の擬人法で描かれた独特な世界観のある作品。この作品に登場する土神は神という名こそついてはいたが風貌はすさまじくひどく、気性も荒かった。対して狐は上品で、人を怒らせることはなかった。
本書の中で著者は土神のほうが正直で狐は少し不正直だったのだろうと記述している。土神の、神でありながらも穏やかになれず自分本位な行動で、狐より劣っていることに腹を立てている場面では現実世界の人間のような嫉妬心や妬みなどの感情がむき出しとなって描かれている。反対に狐は自身の本心を出さず、作品の中の唯一の友人『樺の木』にたとえ嘘をついてでも相手に親切にしている。このことはのちに後悔で苦しむこととなる。最終章になると土神は表面上の付き合いでも樺の木から信頼を得ていく狐に嫉妬心や、劣等感で感情が爆発してしまう。この作品を読むにあたって、土神の行動に注目しながら移り変わる感情を感じてほしい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2019年10月14日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2019年10月14日
みんなの感想をみる