絡新婦の理 (講談社ノベルス)

3.77
  • (506)
  • (328)
  • (893)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 3192
レビュー : 276
著者 :
富屋大介さん  未設定  読み終わった 

 上手いタイトルだよなぁ、と思いました。
 蜘蛛の巣というのは、縦糸が中心から放射線状に広がっているのに対し、横糸は一本だけで、渦巻き状になっているそうです。
 で、この物語では、刑事の木場修がその蜘蛛の巣の横糸を辿るように、少しずつ真相に迫っていきます。

 と、ここからちょっと面倒くさい話になります。

 後で気づいたんですが、作者の作品の構造自体が基本的にコレなんですよね。
 そして、この作り方に似ているのが、『モンスター』や『20世紀少年』での浦沢直樹さんだったりします。

 これ、又聞きで申し訳ないんですが、以前、島本和彦さんが浦沢直樹さんのマンガを分析したことがあるそうで、そこで以下のようなことを話されていたそうです。

 普通のマンガというのは、一つの話がだんだん盛り上がり、クライマックスを迎えるとクールダウンします。一度リセットされて、また次盛り上げていかなければならない。グラフで言うと、横軸を物語の進行、縦軸を盛り上がりと取ると、ちょうど富士山のような形になるわけです。二次曲線で盛り上がって、クライマックスからまた二次曲線で下がるわけです。

 このオーソドックスなやり方の欠点は、一度クールダウンしてまた新たに盛り上げなければいけないので、どうしても「下がる」ときが発生してしまいます。

 しかし、浦沢さんの話の組み立て方は違います。浦沢さんは、例えばA・B・C3つの話があるとすると、まずAを描き始めます。そして、ある程度の所まで来たら(便宜上、1から3くらいまで盛り上がってきたとします)、そこでいきなりAの話をぶつんと切っちゃいます。で、今度はBという話を始める。これがまた3くらいまで盛り上がってきたら、突然ぶった切って、今度はCを1から始める。で、Cが3くらいまで来たら、今度はAの話を2か2.5くらいから再び始めるわけです。
 こうやって3つの話を交互に繰り返しながら少しずつ進めていく中で、一つの大きな物語を浮き彫りにしていくわけです。

 このやり方の上手いところは、A・B・Cを回すことで、全てが盛り上がり続けており、クールダウンする瞬間がないのです。つまり、ずっと盛り上がっているように見せることができる。

 …と、ここまでが伝聞です(ちょっと私の整理も入ってるかもしれません)。

 京極堂シリーズの話も3つか4つくらいの話がコロコロ入れ替わりますよね。構造としては浦沢作品と同じなんだと思います。それこそ、複数の話を先に書いておいてそれらをそれぞれ4つのブロックに切り分け、A1・B1・C1・A2・B2・C2…と配列し直しているかのようです。
 このやり方って、また比喩的になりますが、デッサンの線を引くようなモノのだと思います。鉛筆の線を何本も重ねて描いていく中で輪郭を見せていくように、複数の短い線のような物語の断片を重ねることで、一つの大きな物語を見せていくわけです。

 だけど、このやり方には欠点もあります。どうしても反復が多くなってダレやすくなるのと、途中で何となくオチが見えてくるのです。
 正直に言いまして、本作くらいから京極堂シリーズの話は繰り返しがくどく感じられるようになってきました。同じ事を延々と読まされ、読んでいて「もうちょっと編集がハサミ入れてまとめろよ」と思うことがありました。
(ちなみに、浦沢さんの『モンスター』や『20世紀少年』も途中からそういう印象を受けました。何というか、もったいつけられているというか、引き延ばしをされているみたいに感じちゃうんです)

 話としては面白いんですが、それ以上に冗長を感じるようになってきて、その冗長が構造と密接に関わってるのかな? と思った作品です。

 何だかオススメしにくくなっちゃいましたが、話は十分面白かったです。

レビュー投稿日
2012年6月11日
読了日
2012年6月11日
本棚登録日
2012年6月11日
2
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『絡新婦の理 (講談社ノベルス)』のレビューをもっとみる

『絡新婦の理 (講談社ノベルス)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

『絡新婦の理 (講談社ノベルス)』に富屋大介さんがつけたタグ

いいね!してくれた人

ツイートする