文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

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本棚登録 : 12117
レビュー : 1521
著者 :
富屋大介さん  未設定  読み終わった 

 「面白い本に出会ったら、その著者のデビュー作を読みなさい。そこには著者の全てが詰まってるから」
 子供の頃、本を贈ってくれた伯父が、手紙に書き添えてくれた言葉です。
 本書は、作家・京極夏彦のデビュー作ですが、京極夏彦そして京極堂の魅力がぎっしり詰まった作品だと思います。

 元々、親父が『鉄鼠の檻』を読んでいたのがきっかけで京極堂シリーズと出会いました。
 確かそのとき、
 「それ、面白いの?」と聞いたところ、
 「むちゃくちゃ面白い」と親父が答え、
 「じゃ、読み終わったら貸して」と頼むと、
 「これ、シリーズもんやから、順番に読まんとあかんぞ」と言われました。
 で、調べてみたら、『姑獲鳥の夏』『魍魎の匣』『狂骨の夢』そして『鉄鼠の檻』と、目の前で親父が面白がって読んでいる作品に到達するまでには、アホみたいに分厚い三冊のノベルスを読破しなければならないと知り、愕然としたのを覚えています。
 が、読み始めたらどハマりしました。寝食こそ忘れませんでしたが、学校の勉強は全部忘れて読みふけったのを覚えています(ヲイ

 冒頭、京極堂と関君が、徳川家康とダイダラボッチを引き合いに、延々100頁にわたり実存について議論するところで、一気に京極ワールドに引き込まれました。
 冷静に考えれば、「これ、いつ話が始まるねん?」と思うところですが、そんなことを考えさせない筆致で、知的にスリリングな会話が続くので、貪るように読んだ記憶があります。

 いよいよ事件が始まっても、鬱々とした関君の視点から物語が語られるため、いつしか自分も関君の気持ちに感化されたのか、暗いモノトーンの世界で物語世界を見ていることに気づきました。
 二十か月以上も妊娠中の女性。記憶が見える超能力探偵・榎木津。そして、久遠寺涼子と関君の過去…話はどんどんややこしくなります。
 眩暈坂を登るところから話は始まりましたが、僕も読み進めるにつれ、そんな感じがしてきました(笑)。「これ、ちゃんと風呂敷たためるの?」と少し心配になりながら、読み進めたのを覚えています。

 が、最後、全ての憑き物を落とすため、黒装束に身を包んだ京極堂が出てきたとき、ここまで読んできた僕の、心の中に澱のように溜まった憑き物も一緒に落としてくれたように感じました。
 こんな訳のわからん事件の真相が、京極堂の説明を聞くにつれ、オセロが一気にひっくり返されるように、きれいに説明されていきます。「この世には不思議なことなど何も無いのだよ、関君」というセリフは、著者から自分に向けられた言葉のように刺さりました。人生で体験したことのないレベルの「アハ!体験」だったと思います…って、何かオセロだのアハ!体験だの、比喩がセコいですね…orz

 今更私なんぞがあれこれ書いても屋上屋を架すようなものですし、なるべく予備知識なく読んで欲しいのでモヤーッとした感想しか書けませんが、とにかく未読なら読んで下さい。というか、これ読んでないって時点で人生損してます!

レビュー投稿日
2012年6月8日
読了日
2012年6月8日
本棚登録日
2012年6月8日
8
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