永遠も半ばを過ぎて (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋 (1997年9月10日発売)
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感想 : 103
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 道尾秀介原作の映画「カラスの親指」を観てきました。映画自体は前半が間延びしていて、もうちょっとまとめてくれた方がテンポでたのに…と感じましたが、筋は滅茶苦茶面白い! 何というか、捨てるところが一切無い鯨のように、全ての伏線がキレイに回収され、一切の無駄が無かったところにはただただ唸らされました。

 で、コン・ゲームもの(詐欺師の話)が読みたくなり、TSUTAYAでDVDを借りるわ、古本でコン・ゲームものの名作を漁るわとしていたのですが、ここで目を引く積ん読君が…。それが本書でした。

 著者の『明るい悩み相談室』や爆笑エッセイ・ネタ本はよく読んでいたのですが、小説は『人体模型の夜』と『ガダラの豚』以外、何となく手が伸びませんでした。自分の中で「らもさん=超絶的に無茶してる人の面白エッセイ」という妙な固定観念があったからかもしれません。
 が、今回読んでみて激しく後悔。「もっと早くに読んどけば良かった…」自分のすぐそこに、自分の好きな話が何年もあったとは…orz

 しがない写植屋・波多野の家に、三流詐欺師の相川が巨大タニシの母貝を持ち込むところから話がはじまります。1個1億円するといういかにも胡散臭いタニシの儲け話に、相川の人生の中で出てくる数々の詐欺ネタ。そうそう、こういうのが読みたかったんです!

 ひょんなことから、社史の受注をするためのプレゼンをすることになった相川と波多野。そこで語られる活字文化の話が、私自身日頃から思っていたことがそのまま書かれてあってびっくり。
 最近でこそ本は活字を大きくしてゆったり字間・行間を取ったレイアウトになっていますが、戦中・戦後の紙不足を引きずったような小さい文字を詰め込むレイアウトを見ると、もうそれだけで読む気を奪われることすらあります。
 電子書籍の登場で、こんな議論はタブレットの設定が全部忘却の彼方に押し流してしまうのかもしれませんが、復刊もされない昔の細かい字の本は、軒並み電子書籍化してくんないかなぁ…と、全然違う方向へ話が流れてしまいました。閑話休題。

 物語の中盤、波多野が意識朦朧としながら打っていた写植の機械から、全く覚えの無い文章が出てきます。
 この辺はラリリに深い造詣のある(?)著者の体験が生き生きと発揮されている箇所ですが、この幻想的な文章を「幽霊が書いた文章」として出版社を騙す詐欺に…。

 厳密に言うと純粋なコン・ゲームものとは少し違うのかも知れませんが、その分、あの頃の著者のエッセイで読んだエッセンスが詰まっていて、非常に良質なエンターテイメント作品として仕上がっています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年12月27日
読了日 : 2012年12月27日
本棚登録日 : 2012年12月27日

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