職業としてのAV女優 (幻冬舎新書)

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本棚登録 : 862
レビュー : 146
著者 :
富屋大介さん  未設定  読み終わった 

 これらの価格帯を見てどう思いますか?

・単体…100万~250万円(1本あたりの出演料、芸能人・元芸能人を除く)
・企画単体(キカタン)…30万~80万円(1日あたりの日当)
・企画…15万~25万円(1日あたりの日当)

 これは、モデルプロダクションに登録し、その際に裸の写真から自分の"スペック"から全てをデータベース化されてランク付けされ、その上で業界内に配布されたことを前提に、実際のお仕事として「2絡み、1擬似」をした場合の相場だそうです。

 単体、企画単体(キカタン)、企画…AV女優にはヒエラルキーがある、ということくらいまでは知っていました。
 が、本書を読んでビックリ。長期不況という社会的状況や、AV女優という存在が認知されるようになりかつてほどAV出演に抵抗がなくなっているという価値観の変化、そしてセルビデオの登場等によって以前よりビジネスライクでシステマティックな世界になったことなど、複数の要因はありますが、別の意味でここまで厳しい世界になっているとは思いませんでした。
 厳しいとは、仕事が過酷であるとか、後々まで自分の性行為が映像として残るとか、そういう昔からあったことではありません。供給過剰かつ高いクオリティが要求されるようになったAV女優という職業は、今や裸になる覚悟をもって飛び込んでも仕事がない状態すらざらにある、ということです。一部の超絶クオリティの女の子に「単体」として仕事が集中し、少なからぬ「企画」AV女優にはそもそも仕事が回ってこない。この構造は、まさにAV業界の「格差社会」です。
 最近の子が、普通の生活すらもカツカツでAVの仕事を選んだが、大して生活水準が変わっていないという話は、読んでいると『闇金ウシジマくん』を思い出します。
 あと、お金よりも承認欲求を満たしたくてやっているというのもドキッとしました。承認欲求が目的だと、自分の市場価値がどんどん下がっていっても、より長く業界にしがみつこうとする、というのも切ない話です。
 デフレについては、物価が下がることで賃金も下がったり失業したり、と経済的な文脈で語られることがほとんです。しかし、本当に怖いのは「貧すれば鈍す」で、人間としての尊厳の面においてまでデフレが進行することなのではないか、と読んでいて思わされました。


 考えさせられたのは、ソフト・オン・デマンドの台頭などで、業界の空気がかなり明るい方向に変わったことです。それまでのエロ業界と言えば、今よりもアウトロー色が強く、女優もいわゆる"メンヘラ"な人たちが多かったわけです。が、タイトなスケジュールで確実に良品質な「商品」を作らなければならないAVの現場において、今や心に問題を抱えているような人たちはトラブル発生のリスクがあるので使われなくなっている、ということです。
 今よりもダークだった頃のAV業界は、確かにそういう心を病んだ女性を搾取する構造があったとは思います。が、一方で、そういう人たちの最後のセーフティーネットとして機能してきた部分もあったわけです。
 今はAV女優のクオリティが上がり、腕に注射痕があったり手首にリストカットの跡があったり、一目見て「こらシャブ中や!」と分かるような人たちは見かけなくなったわけです。が、彼女たちは今どこにいったんだろう? と考えると、それはそれで一つのアジールが無くなったとも言えるわけです。

 AV業界の歴史と実態については、特に女性は目を背けたくなるような話もあると思います。が、AV業界というのは僕らが生きている社会の一部を構成するものであると同時に、かつてほど隔絶していない地続きの世界にあるものと言えます。業界に入る・入らない、商品にお世話になる・ならない、に関係なく、知っておくべき内容だと思います。

レビュー投稿日
2012年9月4日
読了日
2012年9月4日
本棚登録日
2012年9月4日
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shin1830さん (2012年9月5日)

参考になりました。
『闇金ウシジマくん』を観てみたいです。

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