ネット評判社会 (NTT出版ライブラリーレゾナント057)

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レビュー : 18
富屋大介さん  未設定  読み終わった 

 ネット時代のあるべき評価システム(評判システム)について実証的に考察した本。

 第一章では、まず思考実験として嘘をついた時点で自動的に罰せられる「針千本マシン」を想定する。そしてそこから、裏切りを制裁・抑止するシステムによって人を信頼しなくても安心して取引に参加できる「安心社会」と、評価(評判)を元に、信頼できる人とだけ取引する「信頼社会」という二つのモデルを提示する。安心社会が集団主義的秩序を前提とし、信頼社会が個人主義的秩序を前提とするという比較が興味深い。

 第二章では、マグリブ商人や株仲間の中に見られる安心社会型の集団主義的秩序について書かれている。第一章で提示された二つのモデルが、具体例を通じて理解できるようになっている。

 第三章では、ネットオークションの実験結果が、そして第四章ではそれを受けて評価と評判についての考察が続く。
・ネットオークション詐欺を働いた人間が、自分のデータをリセットしてやり直しするのを防ぐには、加点方式(=新規参入のゼロの時点が一番低評価)を用いる。
・評価の公平性を担保する方法としては、ピアレビュー(相互評価システム)やメタ評価(評価者の評価に対する評価)を導入する。
 など、信頼できる評価(評判)を担保するための色々な指摘がなされており、理想的な評価システムについて考えさせられる。
 また、公平・公正な評価システムを考えると、つい単一の評価システムを想定しがちだが、人の嗜好を勘定に入れると、むしろ個人間で評価値に補正がかかった方が使いやすいのではないか、という指摘も面白かった。具体的に言うと、ラーメンのレビューで脂っこいラーメンが好きな人が普段からそういうポイント評価をしていると、脂っこいラーメンに高評価をするレビュアーの意見が優先的に反映され、あっさり塩味好きのレビュアーの意見は真逆に反映される、というようなものである。
 Amazonが購入した商品に関連して「この商品を購入された方はこんな商品も購入されています」と紹介するのは上記の評価システム的な考え方に立脚している。主に個人情報の観点から反対されているGoogleの新セキュリティーポリシーも、データを蓄積し、個人の嗜好に合わせた検索結果や広告を反映するという点で共通するものがある。
 個人的な嗜好の偏りに合わせて自分の見る評価やレビューが偏るのは、自分の好きな物だけを見るという点で知的営為としてどうなんだろう? とも思うが、例えばAmazonのカスタマーレビューでファンとアンチが★を5と1でつけ合い★3に落ち着くというのを見ていると、ある程度評価情報に軽重をつけていくシステムが必要であるようにも思われる。

 最後の第五章は「開かれた安心社会へ向けて?」である。
 この中で特に怖いと思ったのが「完全暴露原理」だ。自分の評価を晒すのが社会通念化してくると、この評価システムに参加しない奴は絶望的に評価が低い奴だ、という予断が働くようになるのではないかという指摘には考えさせられた。『パブリック』という本ではプライバシーを守ることよりも個人情報を積極的に公開していくことが言われているが、その思想の先に完全暴露原理的な強制があるとすればもう少し慎重に考えなければならないと思われる。

 現在の、我々を取り巻くネット社会と、これから来る社会をシステムの面から考えるときに、非常に示唆に富む一冊だ。

レビュー投稿日
2012年3月8日
読了日
2012年3月8日
本棚登録日
2012年3月8日
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