NHKブックス別巻 思想地図 vol.5 特集・社会の批評

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レビュー : 16
制作 : 東浩紀  北田暁大 
tomkosakaさん politics   読み終わった 

菅原 琢 (2010) 「アメリカ化」する日本の政治学――政権交代後の研究業界と若手研究者問題
pp. 381-405.

この頃の日本の政治学の水準では統計データの分析によるCausal Inferenceの真の難しさがあまり理解されていなかったように思われる。本来は、単に回帰分析を行うだけではとても十分な研究にはなり得ず、媒介変数の影響をできる限り特定し、その上で説明変数と従属変数の間の因果効果を測定するという、従来の(naiveな?)計量分析よりもややこしい手順を踏まないと正しい分析として認められるべきではだろう。

そうした本来的な難しさがあることに加えて、計量分析研究が粗製乱造されやすい研究環境がある(とした場合)ということは政治学自体の信頼性に対する疑わしさを招くことに繋がるだろう。本論文では「亥年現象」に関する2つの研究において結論が全くの正反対になっているという例が挙げられている。不十分なモデルと不十分な計量分析に基づく研究からは進歩が生まれないのが政治学(社会科学)の難しさだ。政治学には基礎となるべきground theoryがない。Ground theoryのないなかで、マクロ的な政治現象の因果関係を解明しようとすれば、定性的にせよ定量的にせよ、現実のデータに基づいた議論を行わなければならない。基礎理論がない以上、データをよく説明できるような理論を作り上げる必要がある。計量分析はその点において、分析作業の手順が明確であるため、確かに正確な研究を行うのはややこしいとはいえ、社会科学の発展に寄与するはずだと思う。現実のデータをどのように扱えば、よい研究となり、政治学を正しい方向へ進めることができるのか、そのことが研究者に問われているといえる。

レビュー投稿日
2019年3月27日
読了日
2019年3月27日
本棚登録日
2019年3月27日
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