中堅ITベンダーであるSCSKによる働き方改革と開発プロセス改革の記録である。

働き方改革については、残業時間半減や有給休暇の取得をトップダウンで指示するとともに、給与の低下や休日がなくなるリスクを防ぐため、金銭的なインセンティブや予備の休日の制度を作るなど、掛け声だけに終わらない工夫がある。実績も、月の平均残業時間が20時間を切るなど、IT業界では考えられない改善がみられる。

開発プロセス改革についても、二社の合併を機に新しい開発標準を作り、開発現場に定着させることや、スキルの見える化、取引先の集約などに取り組んでいる。ITの現場を知る人なら分かるが、まさに言うは易く行うに難しである。SCSKにおいても、すぐに成果が出るわけでなく、5ヵ年の中期計画として実行して、ようやく目途が見えてきたところだ。

往々にして、企業の取り組み紹介は、不都合な真実は隠すものなので、どこまでが現場に浸透しているか鵜呑みにできないが、それでも細かい取り組み内容まで説明してくれている点は、IT業界にとって参考になるだろう。

2019年9月12日

読書状況 読み終わった [2019年9月12日]

科学的

この言葉をつけるだけであらゆる理論は尤もらしくなる。ビジネスの世界でも、特に文系の人を黙らせる、或いは思考停止に持っていくキラーワードだ。

では科学的とは何か?

これは科学哲学の問いだが、この本の著者はホンモノの物理学者。しかもノーベル賞受賞者。彼が言う科学的とは、実際に世界を理解することに貢献するかどうかである。科学哲学では、もっと正確に定義しようとするが、著者は物理学者なので、そんなことはどうでも良い。むしろ、科学哲学の議論を小馬鹿にしている。そうではなく、歴史を振り返り、どうやって理解が進んだか?どんな方法、思考が科学の進歩に役立ったのか?を冷静に分析する。そこには、当時だからしょうがない、といった妥協はない。どんなに今の理論に近かろうと、そこに観測・仮説・検証のプロセスがなければ、ただの空想である。

このような考えのもと、ギリシャ時代からの自然哲学、天文学、数学のさまざまな発見・進歩を丁寧に解説しながら、方法論について辛口コメントを入れる。そして、ついにニュートンによって現代の科学的方法は確立し、そこから科学が大きく発展することになる。

本書は科学的方法がテーマであるが、科学史としても一級である。天文学がどのように地上の運動とつながったのか、数学の果たした役割、自然を説明できた喜び、などなど当時の知的好奇心の熱が伝わってくる。また巻末にはテクニカルノートとして、当時の理論を数学的に説明しており、こちらも高校数学で理解できる範囲で面白い。

2019年9月5日

読書状況 読み終わった [2019年9月5日]

GDPも世界3位に落ちて久しい。失われた10年はいつの間にか30年に近づきつつある。少子高齢化、国の借金、社会保障の破綻…
経済は回復しつつあるという政府に対し、生活者目線では実感はなく、消費を控えるうちに持たない価値観が醸成され、諦めをごまかすかのような低欲望社会に…

こんな日本でも、まだ復活できるのか?

著者は、海外の様々な論文をもとに、今の日本が取るべき施策を主に3点に絞って説明する。

企業の大規模化
最低賃金の向上
働く人への教育

これら施策のミックスにより、日本の生産性が上がる、と様々な相関関係の証拠をもとに主張する。よくある反論に対しても、海外では相関が低い、あるいは逆相関との理由で叩き切る。

なかなか歯切れ良い内容で、施策自体も共感するが、相関係数だけを根拠として繰り返すのが少し違和感がある。著者自身も言っているが、環境が違えば結果も違うはずで、結局は仮説としてやってみるしかない。霞ヶ関も大企業もなかなか変わらないと非難するが、不確実な施策を強く推進するのは大きな組織では難しかろう。

私自身、40過ぎまで我慢を重ねて少しずつ賃金が上がってきたのに、突然、若手の給与が自分と同レベルに底上げされたら、ホント貧乏くじ世代だ…


2019年9月4日

読書状況 読み終わった [2019年9月4日]

私たちが日々行う意思決定は、結局のところ幸せになるためである。それは自分の幸せのこともあるし、家族、他人の幸せのためもあるかもしれない。

私たちは意思決定をする際には、ほぼ間違いなく予想する。行動の結果がどうなるかを予測し、それに対して自分や家族、他人の感情を予想する。これが正しく予想できれば、幸せになれるに違いない。

客観的な結果については、統計や確率でそれなりに精度を上げることができるかもしれない。本書はそこは扱わない。
本書が扱うテーマは、未来にどう感じるかについて、正しく予想するにはどうすればいいか?である。

著者は心理学者として、この問題がいかに難しいか、さまざまな実験結果をもとに説明する。

例えば、そもそも幸せとは何だろうか?私たちは他人が幸せかどうか分かるのか?もっというと、自分の幸せを分かっているのだろうか?

事故や病気、さまざまな災厄で傍から見ると悲惨な状況なのに、本人は幸せだと言う場面…これは嘘をついているのか、おかしくなってしまったのか?それとも周囲が考える幸せが間違いなのか?

このような疑問から始まり、脳の錯覚、虚構、自己防衛、合理化など、私たちの幸せについての概念に揺さぶりをかけてくる。

そして著者が至った結論は、救いがないような…全編を通して、頻繁なジョークが多少の救いかもしれない…

2019年7月11日

読書状況 読み終わった [2019年7月11日]

発達障害というと、何となく周囲とうまくやっていくのに困難を抱えている人、というイメージで、自分の周りにも人間関係がうまくない人は割といて、一方そんな人とうまくやれない自分の方が発達障害?みたいな感覚もあって、そういう私にとって非常に興味深く読むことができた。

大人の発達障害を取り扱った本書が、他の発達障害の本と大きく違うと思うのは、心理療法のアプローチを採っている点である。
一般に、発達障害の治療は、障害のある部分を技能訓練で補うか、困難による心理的ストレスを投薬で抑えるかが主流である。これは、発達障害が脳神経の機能的な障害であり、根本的な治療はできないという考え方である。
本書においても、そこに異を唱えるものではないが、近年の発達障害の増加の裏には、社会の変化に対する心の反応として発現している可能性もあるとしている。そして心理療法によって発達の段階を踏むことで問題解決を図った数多くのケースでは、クライエントとセラピストのリアルなやり取りが記される。発達障害者は自己の確立が弱いという仮説のもと、セラピストの支援のもと自分を他者と分離する体験によって、大きな変化が起きる。短い言葉ながらもセラピストの感動が伝わってくる。

そして後半以降、タブレットやソーシャルメディア、ぼっちなどの社会変化と発達障害についてのいくつかの論考は、感覚に整合するところも多く、発達障害は個人の疫学的な障害という考えでは不十分だと、著者の思惑どおり感じた。

2019年5月25日

読書状況 読み終わった [2019年5月25日]

人は、自分が理解していないことを理解できないらしい。

こういうと、非常に愚かなように聞こえるが、実はこの特質が人類の進歩に非常に役立っている。私たちは、自分の頭の中にある知識と外部の知識、すなわち本やネットの知識から友人の頭の中の知識までも、本能的に区別せずに生きている。確かに実践的には、自分の頭の中だろうが外だろうが、アクセス可能であれば十分である。

また、世の中はますます複雑になってきて、全てを理解することは不可能だし、理解できるものだけを使って生きていくこともできない。理解できないところは信頼して生きていくしかない。

しかしながら、自分が理解できていると錯覚していると問題になることがある。例えば、原発やロケットなど複雑な仕組みについて、理解できていないことを知らずに判断すると大変な事故につながる。政治家の選挙でも、政策の影響を理解しないで投票すると、予期しない結果になるかもしれない。

本書は、人が無知の錯覚に陥りやすいことを、人の社会性という観点から説明する。そして人の知能は個人の中にはなく、社会との関わり方にあるとして、教育や評価のあり方についても考えていく。

自分の知能について謙虚になれるとともに、生きていくうえで何が大切なのかを考える機会になった。

2019年4月15日

読書状況 読み終わった [2019年4月15日]

昨今、○分で読める名著やら100冊を1冊にまとめた本やら、深遠な知識を手軽に知りたいというニーズが高まっているようだ。難解さで有名なカント哲学について、さらっと知りたいと考える人も(私も含め)一定以上いるだろう。

本書は、ジュニア新書ということで中学生向けなのだが、カントの生い立ちからはじまり、純粋理性批判、実践理性批判そして(書名すら知らなかった)判断力批判についてその内容をカントの思想の流れにそって丁寧に解説。大人向けのカント入門も多々ある中、大人が中学生向けのこの本を選ぶのは勇気がいるものの、かみ砕いた説明は非常に分かりやすい。

ちゃんと勉強している人にとってどれくらい正確なのかは分からないが、初めて学ぶ人にはこれくらいがよいかも。

2019年3月31日

読書状況 読み終わった [2019年3月31日]

特異点解消の定理でフィールズ賞を受賞した、日本人数学者の広中平祐による自伝。

数学をとおして、なぜ学ぶのか、どうやって一つのことをやり続けるのか、ものの考え方などについて、筆者なりの考えを若者向けに伝える内容。

非常に同意できる点が多いのだが、当たり前すぎるのと説教臭いのが時代を感じさせる。

2019年3月11日

読書状況 読み終わった [2019年3月11日]

読書状況 読み終わった [2019年2月23日]

読書状況 読み終わった [2019年1月7日]

読書状況 読み終わった [2018年12月26日]

読書状況 読み終わった [2018年11月17日]

読書状況 読み終わった [2018年11月1日]

読書状況 読み終わった [2018年10月15日]

覚えているだろうか?

ほんの10年前までは、日本は世界第2位の経済大国だった。今や中国は日本をはるかに追い越し、世界一の座を耽々と狙っている。

この躍進は、世界の工場として海外からの設備投資が集中し、その後、豊かになった国民による内需が拡大したため、といった経済的な説明もできるのだが、実は、中国政府の長期的な戦略に基づく周到な計画のたまものである。

100年マラソンといわれるこの戦略は、西欧により中国は搾取されてきた雪辱を果たすため、毛沢東時代から秘密裡に実行されてきた。

「孫子」「戦国策」といった中国古典においては、謀略を使い、戦わずして勝つことが美徳とされる。100年マラソンにも、この思想がしっかり息づいている。

私たちは、だまされているのだ。

民主化、自由経済を目指していると信じさせ、技術情報を盗み、着々と武力を整え、気づいたときにはもう手遅れ…

本書はCIA諜報員として長年中国を研究してきた著者による、スパイ小説さながらの見聞録である。本書を読めば、国と国の競争とはどういうことなのか、民主化・自由経済の理想がいかに脆弱なものか、思い知らされる。

2018年10月12日

読書状況 読み終わった [2018年10月12日]

理研(理化学研究所)の脳科学総合研究センターの各研究チームによる最前線のレポート。

全9章からなり、各章それぞれ別の研究チームがか書いているため、記憶、感情、地図、ニューロン、数理さらには親子関係まで非常に多岐にわたっており、脳の世界は奥深い。本書だけで全てがカバーできているわけではなく、「おわりに」に書かれてるように、「むしろ、分かっていないことが山ほどあり、これから何を研究すればよいのかという脳科学の未来について、一緒に考えていただきたかった」。計測技術の進歩により、脳の理解は飛躍的に進んだように思えるが、まだまだゴールは遠いようである。

各章のチームリーダーがなぜその研究をしているのか、それぞれの思い入れが書いているのも魅力的である。

2018年9月19日

読書状況 読み終わった [2018年9月19日]

前著「まず、ルールを破れ」「さあ、才能に目覚めよう」などで「強み」に集中することの大切さを世間に知らしめた著者による「強み」を具体的に活かすための本。

強みは資質、スキル、能力で構成され、このうち資質は生まれつき変わらない。という流れはこれまでの著作と同様。強みを発見するヒントとして、ストレングス・ファインダ―などの自己分析ツールにも言及しているが、本書ではこうしたツールはあまり重視していない。

ストレングス・ファインダーは面白いが必須ではなく、強みは自分の感情が明らかにしてくれると説く。そのため、本書はワークブックになっていて、日々の仕事の中で、何をしているときが気分が高揚したか、などを細かく記録することから始める。

強みを発見した後がさらに大変で、友人に説明したり、上司に面談したりと、本当に実践に移しながら読む人は少ないかもしれない。

完全な実践は私には難しかったが、少しでも自分の強みを活かす仕事を増やし、弱みとなる活動を減らすために、一歩踏み出そうという勇気が出る本だった。

2018年9月3日

読書状況 読み終わった [2018年9月3日]

漫画になったり新装版になったり、今とても話題なので、小学生の娘の夏休みの読書のために購入。

軍国主義の機運が高まる時期に、このような自分の頭で考えることを推奨する内容の本が出版できたことが驚き。時代背景は古いものの、内容は現代にも通じるところが多く、大人が読んで考えさせられることはないかもしれないが、子供に堂々と語れるかというとそうでもない、という絶妙なレベル。夏休みが終わって、娘はまだ読んでいないが、優先的に読ませようと思う。

2018年8月15日

読書状況 読み終わった [2018年8月15日]

米国NIC(国家情報会議)が大統領のために世界の情勢をまとめる「グローバルトレンド」の主筆が、「グローバルトレンド2030」の時に調査した内容をもとに、一般向けに分かりやすく加筆修正した本。国家機関の調査だけあって、政治・経済・国際関係の観点からの記載が多く、テクノロジー視点の未来予測と違って、お堅い場で使うにはちょうど良い。

2018年8月3日

読書状況 読み終わった [2018年8月3日]

テクノロジーの進歩による社会の変化を「拡張」というキーワードで整理。

情報、知能、身体、社会の拡張について、現時点の最先端と書来の予測を丁寧に書いていて、ただの未来予測本と一線を画している。

楽観主義的未来予測なので、懐疑的な人は、本当にそんな変化が起こるのか?と思うかもしれない。しかし筆者は、人類は技術がもたらす変化に対して常に抵抗してきたが、最終的には変化を受け入れてきたという歴史から、将来の変化もきっと受け入れるに違いないという立場である。

最も尖った未来シナリオとして本書を参考に備えをしておこうと思う。

2018年7月17日

読書状況 読み終わった [2018年7月17日]
ツイートする