イワン・イリッチの死 (岩波文庫)

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レビュー : 73
Ticklerさん  未設定  読み終わった 

一見すると「死」をテーマにしているようだが、本当のテーマは「心の目覚め」だ。

主人公は病床で肉体的苦痛に苛まれながら、苦痛、死、人生の意味など答えのない自問が次々に湧き起こり、精神的にも苛まれていく。

死の直前になって、ようやく地位、名誉、世間体、経済的な富裕、他者との比較評価など、自分が当たり前のように信じていた人生の価値尺度が全て「間違い」だと気づく。

凡人を主人公にしたのは、この主人公こそわれわれ読者であり、他人事ではないという著者のメッセージだ。

死の間際に、まだ「本当のこと」ができると気づいた主人公は、息子が手にしてくれたキスでようやく心が目覚める。

最後に自分のことを忘れて家族のことを思って、いまその瞬間にできることをして、息を引き取る。

だから、心の目覚めた主人公にとって、それは「もう死ではなくなった」のだ。

このメッセージは、裏を返せば「心の目覚めない人生は死んでいるのと同じ」ということかもしれない。

残念なのは、訳。原文にフランス語が使われている箇所は、そのニュアンスを訳そうともしていない。

本書に興味がある人には、光文社から出版されている新訳をお薦めしたい。

レビュー投稿日
2011年7月16日
読了日
2011年7月16日
本棚登録日
2011年7月16日
3
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