慈悲 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社 (2010年11月11日発売)
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感想 : 9
4

仏教が説く本質とは何か?
という問いに対して著者は「慈悲」と解説している。
慈・・・喜楽の因果を与える事
悲・・・憂苦の因果を与える事

いわゆる抜苦与楽であるとするが、ではその慈悲というものはどのように捉えられて、各宗派や歴史の中でどのように扱われていたか探求していく本。

とはいえ、一般人の日常生活に即してというよりは専門の仏教学者向けに書いてあるようで、なかなかとっつきにくかった。
また、学術的に扱っている面が大きい分、全体的に客観的であり淡泊な感じがした。

なので、もったいなさも含めて☆4つ。

以下、覚えておきたいなとおもったこと。

・ヨーガ信者では、楽に対しては友情を、苦については同情を、徳に対しては喜びを、悪に関しては平静であることを修する

・自己を護ることが、同時に他人を護る事であるような自己は、もはや互いに相争うような自己ではない。
すなわち、一方の犠牲によって他方が利益を得るというような自己ではない

・自他一如。自他同じく利するなり。
 他人を自己と同一に扱うべし。

・慈悲の観法は瞋恚の人には必要だが、貪愛の強い人にとっては不適切である。
慈しみ人間的な愛情に基づいているが、人間的な愛情は同時に欲情に転嫁する危険をはらんでいる。

・愛と敬とともに行われるのが、よき人のありさまである。

・恋愛は常に憎しみに転じうる可能性をもつ、しかるに慈悲は愛憎の対立を超えた絶対のものである

・慈悲は修行者の本質であり、それさえ失わなければよい。他人からどう思われようと、それは意に介するところではない。

・栄西の実践、自分はたといこの罪によって地獄に落ちても、ただ衆生の飢えを救いたい

・自己が救われるということは、他人を救うという働きのうちにのみある。他人のために奉仕するという事を離れて自己の救いはあり得ない

慈悲の実践は人が自他不二の方向に向かって行為的に動くことのうちに存する。
それは個々の場合に自己を捨てて他人を生かすことであるといってよいだろう。
もしも単に自己を否定するというだけあるならば、それは虚無主義とならざるを得ない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年5月8日
読了日 : 2021年5月8日
本棚登録日 : 2021年5月8日

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