「武士道」を説いた本として有名な葉隠。江戸時代中期に山本常朝という人が語った内容をまとめたものと言われています。
この本ほど内容が誤解されてるものも無いんじゃないでしょうか。
まず、一般に「武士道」と思われているイメージは新渡戸稲造の逆輸入本「Bushido: The Soul of Japan」からきています。その内容は日本での宗教的道徳観の一つである、ということで、まぁいわゆる「侍」のイメージを作ってしまったのでしょう。
そういったイメージが強く、この「葉隠」も「武士道と云ふは、死ぬ事と見付けたり」の一文のインパクトが強く、戦時中なども読まれていることから自己犠牲の尊さや、赤穂浪士的な美徳を説いているように誤解されています。しかし、通して読んでみるとまったく印象が違いますね。
まず「武士道と云ふは、死ぬ事と見付けたり」の一文は意味合いとしては「一瞬一瞬を死にものぐるいで」というものであり、とくに殉死や特攻を美化するものではありませんし、「忠義」というものも、「忍ぶ恋」つまり片思いのようなもので、主君が冷淡であったりそのようなときに発揮されるもので「これが忠」とは言えるようなものではないとしています。
ここまででも堅い本と思われそうですが、当時の武士生活のHOW TO的な要素も多く、苦手な上司の酒を断る方法や、あくびの止め方など笑えるような内容もたくさん含まれています。
個人的な考えでは当時のライフスタイルの一種の自己啓発本であり、新入社員などへの武士入門マニュアルのような意味合いがあったのではないかと。
ぜひ気軽につまみ読んでほしい本です。
全3巻 所有
2、3巻 行方不明中
- 感想投稿日 : 2009年5月10日
- 本棚登録日 : 2009年5月10日
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