四時過ぎの船

  • 新潮社 (2017年7月31日発売)
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感想 : 1

祖母も、親も、きょうだいも、さして差し迫ってリアルなものではない。自分自身の生ですらも、何となく他所ごとで過ぎていく。ただそうして折り重なっていく反古のような時間を、追憶の中に深く沈降していく体験だけが、跡づけ、解きほぐし、そして他所他所しいものであった祖母やきょうだいと結び合わすこともあるかも知れない。リアルとは、追憶の中に踏み迷うときに後になってたち現れてくるもの、取り返しのつかないもの、それ故にこそ曖昧で不確かな〈現在〉のぼんやりとした夢の中から、現実を、結び直し、在らしめるもの。過去を思い出そうとしないとき、我々は生きていない。眠っている、すべてが薄明かりにぼんやりとしたまま、現実として定着しないままに折り重なっていく。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2019年1月29日
読了日 : 2019年1月29日
本棚登録日 : 2019年1月29日

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