町からはじめて、旅へ (角川文庫 緑 371-19)

著者 :
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感想 : 1

 何度も行ったハワイだけど、夢に見る光景があります。平日の午後、日差しの強い公園で、ベンチに腰掛けた日系のおじいさんに、昔話を聞く……。
これを実際にやってのけたのが片岡義男。そこで聞いた魔法のことばが「チャイチャイブー」。ちなみにチャイチャイブーとは「Chichibu」つまり秩父。戦前の移民船秩父丸のことです。

 秩父丸は1930年に建造された豪華客船。1941年には定期便としての役目を終えたので、この船を知る方はもういい歳です。しかし片岡義男がハワイで個人的にヒアリングの日々を過ごしていた60年代には、まだ老人たちにとって日本もハワイも身近な場所であったはず。そんな頃のハワイを知っている彼に、私は嫉妬すら感じます。

 片岡義男の小説には、こうした実話を元に書かれたものが、非常に多い。この本にも「「チャイチャイプー」なんて、すごいじゃないか」「憧れのハワイ航路」「ハワイアン・ハイ・タイム」「アロハ・シャツは教会のバザーで買うものさ」「ヒロの一本椰子」などの短編が収められています。そのどれもが、凡百のハワイ小説にはないリアリティを持っています。

 ハワイの印象は、ホノルルを出ると一変します。どちらかというとホノルルが特殊なのでしょう。他の地域ではのんびりと南の島の生活が営まれているのですから。ちなみにオアフ島南部にある「ワイパフ(Waipahu)」地区は「日系移民が作った町」として知られています。以前ここには広大なサトウキビのプランテーションがあり、移民の人たちは主にそこで働いていたのだそうです。

 ホノルルにも日系人のお年寄りをみかける場所があります。たとえばワイキキ・ビーチの西に広がるアラモアナ・ビーチ・パークや、カイルア・ビーチ。天気のいい朝、ビーチを散歩していると、それらしき人たちと出会います。いつか「こんにちは」と挨拶して、昔話を聞いてみたい。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: トラベルライター
感想投稿日 : 2011年7月6日
本棚登録日 : 2011年7月6日

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