物語フィリピンの歴史: 盗まれた楽園と抵抗の500年 (中公新書 1367)

著者 :
  • 中央公論新社 (1997年6月1日発売)
3.56
  • (3)
  • (13)
  • (15)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 177
感想 : 17
4

フィリピンに住んでいるからには、基本的な歴史くらいは知っておきたいと思って手ごろな入門書を探したのですが、あまり多くないですね。本書は新書ですが、しっかりと詳細な内容まで説明されている良書だと思いました。
16世紀にスペインに、19世紀にはアメリカに統治されるという500年の苦難の歴史を歩んできたフィリピン。その間にも幾度も民族独立に向けた動きがありました。本書が指摘するポイントのひとつは、マルコス政権を打倒した民衆のパワーは、500年の歴史において民衆が持っていた思いが現れたものであるという点。しかし著者は、そのパワーを活かして本当の民族自立を成し遂げようとしていない指導者に対して批判的です。現在のフィリピン語と英語の並立教育や、アメリカ文化への傾倒などに対して、本来向き合うべき自民族の自立という観点から、疑問を呈しています。
21世紀になって、若い人口も多く、英語を話せることが大きなメリットになる時代。これから、フィリピンは大きく経済的成長を遂げる可能性はあると思います。民族アイデンティティ確立とグローバル化への対応の両立という、いまや新興国がどこでも抱えている課題に対して、もしかするとフィリピンは回答を示せる良い位置にいるのかもしれません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会
感想投稿日 : 2012年11月19日
読了日 : 2012年11月19日
本棚登録日 : 2012年11月19日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする