孤島の鬼 江戸川乱歩ベストセレクション(7) (角川ホラー文庫)

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本棚登録 : 1045
レビュー : 105
著者 :
とし長さん 冒険・スパイ・アクション   読み終わった 

 30にもなっていないにかかわらず頭髪のすべてが白髪となっている簑浦。それは彼が数年前にある奇怪な事件に巻き込まれたからであった。恋人の死、友人の死、そして事件はさらに恐ろしい方向へと転がりだしていく。

 前半は正統派のミステリー。密室の殺人、衆人環視の中での殺人という謎が話の軸です。しかし中盤それが解かれたと思いきや物語は思わぬ方向にスライドしていきます。前半のミステリから後半は冒険活劇、それも乱歩の怪奇趣味が全開で描かれるので乱歩の様々なエッセンスがこれ一冊で楽しめます。

 そしてこの作品を単なるエンタメ以上の作品に引き上げたのが諸戸道雄の存在。同性愛者で一度簑浦に告白したことのある彼が事件に絡むことで、怪奇ミステリのこの物語に愛憎もからんでくる切ない恋愛小説の面も見えてくるのです。乱歩作品に恋愛要素のイメージはあまりなかったのですが、こういう作品もあるのか、と乱歩の引き出しの多さに改めて驚きました。

 そしてそうした恋愛要素が普通の男女ではなく(作中では簑浦の最初の被害者の初代との恋愛描写もあるのですが)、同性愛者の恋愛という観点から書くのも、なんとも乱歩らしいなあ、と思います。

 乱歩作品では他にも『芋虫』や『人間椅子』など倒錯した愛情を持った人物が色々出てくる印象でしたが、諸戸がもしかすると一番乱歩作品で正常に近い人を愛する、という感情を持っていたのかもしれないですね。

 今思い返すと、ものすごく内容の濃い小説ですが、ミステリ、冒険、怪奇、そして恋愛とあらゆる要素を独自の乱歩色で塗り上げたこの作品は今後も唯一無二の作品として色あせることはないように思います。

レビュー投稿日
2014年9月17日
読了日
2014年9月16日
本棚登録日
2014年9月14日
5
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