桐島、部活やめるってよ

3.30
  • (196)
  • (558)
  • (761)
  • (262)
  • (65)
本棚登録 : 3924
レビュー : 932
著者 :
とし長さん 文芸・文学・群像劇   読み終わった 

 図書館より。
 同じ高校を舞台に、5人それぞれの視点から学校生活を切り取った連作小説。

 前半は普通の青春小説だな、と思ってしまったのですが「前田涼也」の章でその考えが一変しました。

 よく本や歌で「ここに書かれているのは自分のことだと思った」という感想が聞かれます。自分自身はそこまでつよくそういう感情を持ったことはないのですが、前田涼也はそれに近いものを感じました。

 彼の章で描かれるのは、文化部と運動部やいわゆるスクールカースト間の越えられない壁です。みんななんとなく自分のやってはいけないことを理解している、という記述には大いにうなずいてしまいました。そして体育のサッカーの描写もすごかったです。切なくて、残酷で、自分にも身に覚えがあってある意味泣けてきました(苦笑)。

 大学生になってから、自分の趣味を肯定的にとらえる機会が多くなったような気がしますが、なぜか小・中・高校時代は本好きということは一つ下に見られているような気がして恥ずかしかった覚えがあります。あの劣等感はどこからやってきたのか本当に不思議でなりません。自分が運動得意だったらまた違ったのでしょうけど。

 前田涼也に話を戻すと、決してクラスで目立つわけでもない彼がそれでもうらやましいと感じました。彼には映画という光があるからです。自分自身は彼と同じ時代にそこまで打ち込んでるものがなかったので、そういう光を持っている彼がとてもうらやましく思いました。終わりかたもいい感じ。彼の最後の決断が実行されたのかどうなのか、想像してしまいます。

 前田涼也以降の二人の章も、高校生のモヤモヤを非常に巧く表現してくれていたと思います。「宮部実果」の章は彼女の家庭事情が特殊でこの本の中で少し浮くんじゃないか、と読み始めは思ったのですが、その設定を学校生活にしっかりと落とし込みつつ、しっかりと家族の物語にも一つの区切りをつけてくれているあたりが良いなあ、と思いました。

 「菊池弘樹」では何をしたらいいのか、もしくは何かしていても「本当にこれでいいのか」と思ってしまうそんなだれでも一度は感じたことのある焦燥感がとても伝わってきました。これも自分に近いものを感じてしまいました。

 こういう学生時代の感情って世代によって違うものなのでしょうか? ぜひいろんな世代の人に手にとってもらって自分の学生時代と比べてほしい、そう思いました。

 第22回小説すばる新人賞

レビュー投稿日
2014年2月24日
読了日
2014年2月24日
本棚登録日
2014年2月18日
3
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『桐島、部活やめるってよ』のレビューをもっとみる

『桐島、部活やめるってよ』のレビューへのコメント

koshoujiさん (2014年2月26日)

花丸&フォローありがとうございます。
とし長さんのレビュー拝見し、なかなかのものでしたので、こちらからもリフォローさせていただきました。
これからのレビューも楽しみにしています。

ところで、この作品の疑問の件。
学生時代の感情は世代で違うというよりも、男子校、女子校、共学校の違いではなかったのか、と私は思っているのですが。
私は男子校だったので、このようなひりひりするような感じがさほどありませんでしたので。
私はすでに齢50を過ぎましたが、それでもこの作品の青春の香りは十分に堪能できました。
朝井リョウ君の観察眼と表現力の鋭さは群を抜いていると思います。
是非、他の作品も読んでみてください。<(_ _)>

とし長さん (2014年2月27日)

koshoujiさん
コメントありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。

koshoujiさんの男子校、女子校、共学校の違い、なるほどと思いました。自分は小・中・高とすべて共学でしたが、異性の存在を意識しての行動や心理というもののあった気がします。また高校時代は文系コースでクラスの男女比が男子1、女子3くらいだったので余計にそういうのがあったのかもしれません。

朝井リョウさんの作品、今回が初読でしたが、たしかに観察眼の鋭さを感じました。朝井さん本人はスクールカーストで言うとどのあたりにいたのか気になります(笑)

折に触れて他の朝井作品も読んでみますね。

コメントをする場合は、ログインしてください。

『桐島、部活やめるってよ』にとし長さんがつけたタグ

いいね!してくれた人

ツイートする