レディ・ジョーカー 上 (新潮文庫)

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本棚登録 : 2206
レビュー : 177
著者 :
とし長さん ミステリー・サスペンス   読み終わった 

 日本有数のビール会社”日之出ビール”の社長、城山恭介が誘拐される。犯人グループは城山とある取引を結び彼を解放、事件は日之出ビールに警察、マスコミを巻き込み、裏社会の人間たちも暗躍する様子を見せ、静かに波紋を広げていく。

 高村さんの作品を読んでいて圧倒されるのが、文章に込められた力です。その力というものは他の作家さんの作品と比べても突出していると思います。

 その力の根底にあるものは作者の高村さんの一種の情念にあるように思います。この本で描かれる問題は自身の闇を隠し通そうとする企業の姿に、被差別部落、政治と権力のつながりとどれも複雑なものばかり。しかしそれでもそうした問題を組み伏せ、話を作り上げる情念が感じられるからこそそう感じるのではないか、と思います。

 そして、この本を読んでいてもう一つ感じるのは犯人グループが感じる閉塞感。犯人グループのメンバーはそれぞれ自らの人生に対し、何らかの言葉にできない感情を抱えています。それがこの誘拐につながっていくわけですが、その閉塞感の描き方がとにかく巧い!

この本の単行本版が出版されたのは1997年だそうです。現代の日本も”希望のない社会”や”格差社会”と言われるように一種の閉塞感があるように思います。そうした閉塞感の芽生えをいち早く察知し、個人の言い知れない感情すらも描き切ったからこそ、この本の厚みはさらに増したように思います。

 まだ上巻ですが今後の事件をめぐりどのような人間模様が繰り広げられるのか、非常に楽しみです。

第52回毎日出版文化賞
1999年版このミステリーがすごい!1位
このミステリーがすごい!ベストオブベスト9位

レビュー投稿日
2014年8月4日
読了日
2014年8月3日
本棚登録日
2014年7月30日
3
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