龍は眠る (新潮文庫)

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本棚登録 : 8998
レビュー : 742
著者 :
とし長さん ミステリー・サスペンス   読み終わった 

 ある嵐の晩、雑誌記者の高坂は、自転車をパンクさせ立往生してしまっている稲村慎司という少年を拾うことになる。
 慎司を送り届けることにした高坂だが、その途中で子供がマンホールの穴に落ちたと思われる事故に遭遇。そのとき慎司は、その事故の真相を語り始める。慎司は超能力者で、事故の原因となった情景が見えたというのだ。高坂は、慎司の言う通り、犯人の車を探し始めるのだが……

 宮部さんのすごいところは、人物描写や心理描写もそうなのですが、登場人物それぞれが抱えるエピソードの分厚さもあると思います。上で簡単に書いたあらすじも、これはプロローグみたいなもので、短編、あるいは中編でも使えそうなプロットを惜しげもなく長編の中で使い、そしてそれを登場人物の葛藤を伝えるのに機能させ、なおかつ冗長に感じさせない、それが宮部さんの一番すごいところではないでしょうか。現にこの小説でも、最初のプロローグが、慎司の人間性や超能力を持ったが故の苦しみをしっかりと伝えてくるのです。

 そして、話は超能力を持った人物たちの真偽を探る展開に加え、高坂の過去を巻き込み二転三転としていきます。慎司の超能力を嘘だと言い切る青年や、高坂に届く謎の脅迫状、かつての婚約者の登場など、場面場面で謎や引きを配置し、どんどん読まされます。ほんと宮部さんの作品は、初期作からうまいなあ。

 サスペンスとしての引っ張り具合も一流ですが、ラストに至るまでの、ある登場人物の動きや心理も読んでいて泣かされます。サスペンスとしても、特殊な能力を持った人間のドラマとしても一級品の出来です!

第45回日本推理作家協会賞
1992年版このミステリーがすごい!4位

レビュー投稿日
2017年1月22日
読了日
2017年1月21日
本棚登録日
2017年1月21日
2
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